被災から年数を重ねても浮かび上がる課題がある。まだまだ復興は道半ばである。被災地を取り残すことなく、しっかりと目を向け続けていかねばならない。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から、11日で14年となる。原発の廃炉や人口減少など課題が山積する中で、放射性物質を帯びた除染土の処分が難航している。看過できない問題だ。

 福島第1原発が立地する大熊町と双葉町にある除染土の中間貯蔵施設は、国の要請で両町が受け入れたものだ。除染土は2045年3月までに県外で最終処分することが法律で定められている。

 総量を減らすために低線量の除染土を再利用する想定だが、首都圏の公共工事に使う計画は住民の反対で頓挫した。処理は進まず、今後の見通しは立たない。

 双葉町の伊沢史朗町長が、町内で除染土の再利用を検討したいとする私見を公表した。「理解醸成」が目的というが、社会への問題提起と受け止めるべきだ。

 原発立地自治体だけが負担を強いられることがあってはならない。政府が主導し、責任を果たす必要がある。

 津波などで自宅を失った人らが暮らす災害公営住宅で、入居者の交流や行事が途絶えるケースが増えているのも気がかりだ。高齢化や退去が進み、自治会が機能しなくなってきたという。

 高齢化率が74%に及ぶ岩手県山田町の公営住宅では、役員の担い手が不足し、行事の参加者が激減した。同県大槌町の100世帯超が入居する県営アパートでは、4年以上交流会が開かれていない。

 住み慣れた地を離れた生活再建では、コミュニティーが大切な鍵になる。被災者同士の支え合いを保つ仕組みは欠かせない。

 震災による苛烈な体験の後遺症が、時間を経て表面化する事例もある。心の復興には長期的ケアが必要だ。中越地震で復興支援員らが伴走型の支援をした本県には、伝えるべき蓄積があるはずだ。

 能登半島地震を踏まえた課題を検証する本県の防災対策検討会では、過去に学ぶ重要性が強調された。東日本大震災の被災地は記憶の継承に力を入れるが、その活動が停滞している現実もある。

 宮城県の公益社団法人「3・11メモリアルネットワーク」の調査では、語り部活動など震災学習プログラムの24年の利用が、ピークの13年に比べ30%以上減った。

 被災した学校などを活用する震災遺構や伝承施設の来訪者はこれまで増加傾向だったが、24年に下落に転じた。調査した33施設のうち20施設で前年を下回った。

 震災への関心低下がうかがえる現状を、深刻に受け止めたい。このまま風化を進行させてはならない。被災の実態や悲しみを忘れないことが、何よりの防災につながると心に刻みたい。