遊亀楼魚兵の新潟郷土料理シリーズ
遊亀楼魚兵の新潟郷土料理シリーズ

 もらっても贈ってもうれしい気持ちになるお土産。進学や就職、転勤、旅行などで人の往来が活発になる春は、お土産需要も高まる。新潟らしい品で喜んでもらいたいと、新たな発想やアイデアで商品開発に取り組む県内企業の戦略を紹介する。(5回続きの4)

 新潟県の郷土料理であり、ふるさとの味として親しまれている「のっぺ」や「煮菜」「鮭の焼き漬け」。料亭の「確かな技」で豊かな味わいを生み出した「新潟郷土料理シリーズ」が、手土産や贈り物、ふるさと納税の返礼品などで人気を集めている。

 開発したのは、1868(明治元)年創業の老舗料亭「遊亀楼(ゆうきろう)魚兵(うおひょう)」(三条市一ノ門)。きっかけは三条市の人材育成事業だ。工芸雑貨店を展開する中川政七商店(奈良市)による講座を受けた女将(おかみ)の今井久美子さん(44)が「出かける際に使いやすい手土産があまりない」という地元の声を受け、商品開発に取り組んだ。

 のっぺなどの郷土料理は各家庭で受け継がれ、正月など大人数が集まるときに振る舞われるなど長く生活に根ざしてきた。しかし、近年は家族や親戚が大勢集まる場面が減り、作る機会が減っているという。素朴で懐かしい地元の味を求める人は少なくない。新潟らしい手土産のニーズを感じ5年ほど前に商品化した。

遊亀楼魚兵が商品化した「新潟郷土料理シリーズ」ののっぺ

 佐渡の銀ザケ、五泉のサトイモ、三条の小松菜など県産食材にこだわるほか、甘さを抑えるなど現代風の味に仕上げた。縦置きできるパッケージにすることで土産物として扱いやすくするなど工夫を凝らした。

 地元での手土産需要に加え、和食の浸透によってインバウンド(訪日客)でも新潟の味として注目されている。懐かしさや新潟らしさを感じる商品としてふるさと納税でも選ばれている。

 同料亭は感染禍で...

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