
2021年11月の提訴後、記者会見に臨む江蔵智さん
自分の母親は、生みの親ではないかもしれない。父親も血がつながっていないようだ―。
江蔵智さん(67)は1997年、アイデンティティーが揺らぐ出来事に見舞われた。きっかけは入院した母の血液検査。母親はB型と知った。父はO型。江蔵さんはA型で、両親からは生まれることがないはずの組み合わせだ。
その7年後、家族で受けたDNA型鑑定の結果が、疑念を確信に変えた。専門家からこう告げられた。「あなたの体にはお父さん、お母さんの血は一滴も流れていない」。自分はどこから来たのか。(共同通信=江森林太郎、渡辺顕子)
▽違和感
江蔵さんが生まれたのは1958年4月。思い返すと、幼い頃から違和感はあった。家族でテ...
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