復興とは何ですか-。中学生にそう聞かれ、長岡技術科学大学の上村靖司教授は、こう答えた。「復興とは、複数の人が一つのものを担ぎ、同じ方向に向かっていくこと」

▼先月新潟市で開かれた防災推進国民大会で話していた。祭りの神輿(みこし)をイメージしているという。確かに、復興の「興」と、神輿の「輿」はよく似ている。文字の下部にある二つの点を人に見立てると、長い棒の上に乗ったものを、一緒に担ぐ様子に見えてくる

▼中越地震の震源地、川口町(現長岡市)出身の上村さんは、復興計画の策定に関わり、地域の復興に尽力した。詳しい震源地を確かめて、地元の中学生と一緒に長い木ぐいを担いで運び、「震央」の標柱を立てたこともある

▼過疎化や高齢化が進む地域と向き合い、古里をどう立て直すか、語り合った。そうした復興のプロセスは、地域を見つめ直す機会になった。地震によって生まれ育った土地の良さを再認識したという人は少なくない

▼地震から23日で21年がたち、被災の爪痕はもう目立たない。川口地域では20年の節目だった昨年で式典開催を最後にすると決めていたが、今年は有志が形を変えた集いを開く。記憶とぬくもりのバトンを次世代へとつなぐ、そんな場になるのだろう

▼改めて考える。復興とは何だろう。辞書を引くと「興」には「面白く楽しいこと」という意味もある。被災を糧にいくつもの絆が生まれた地域で、世代を超えた人々が楽しく暮らしていること。そんな解釈があってもいい。

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