県内の高3生も浪人生も追い込みに入る頃だろうか。年明けの1月17日から始まる大学入学共通テストまで3カ月を切った。文系科目でどんな文章題が出題されるか、毎年興味深く見ている
▼今年の国語の第1問は、観光について考察する文章だった。訪日客の増加に伴いオーバーツーリズム(観光公害)が各地で顕在化する中、時流に即した出題といえようか。新聞報道が解答を導く一助になっていれば幸いだ
▼新科目だった「歴史総合、日本史探究」の近現代史に、松本清張に関連した問題が出たのは意外だった。「昭和100年」にからめ昭和を代表する作家の一人に白羽の矢を立てたか。清張の年譜や本格デビュー前に懸賞小説で入選した短編「西郷札(さいごうさつ)」を題材に時代状況を尋ねた
▼貧困を回想した自伝「半生の記」も取り上げられた。清張が召集されて朝鮮半島へ渡った際の文章を示し解釈を求めた。長谷川町子が4コマ漫画「意地悪ばあさん」で清張を描いた回を素材に使う問いもあり、国民的作家へのこだわりも垣間見えた
▼独学で数々の歴史小説を手がけた作家の足跡は、「探究」科目の初回にふさわしいという出題の意図があったのだろうか。考えを巡らせてみたが分からない
▼マークシートで選択する正解は一つしかないけれど、受験生は、正解が一つとは限らない学問という名の森へ、羽ばたこうとしている。秋が深まるこの時季からが踏ん張りどころ。共通テストの出願者は約49万人という。力を出し切れますように。