東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を判断する際の材料となる重要な総括だ。これまでの議論を誰がどのように取りまとめるのか不透明になった。

 原発の安全性を巡る県独自の「三つの検証」の最終的な総括作業をどう進めていくのか。県は拙速にならず、丁寧に示すべきだ。

 三つの検証を取りまとめる検証総括委員会の在り方について、意見が対立していた県と池内了(さとる)委員長の折衝が事実上決裂した。

 池内氏の任期は31日で切れる。委員長が不在になるとみられる4月以降、どんな体制で総括作業を進めるのか見通せなくなった。

 三つの検証を巡っては、東電福島第1原発事故の原因、健康や生活への影響、事故時の安全な避難方法に関する報告書が今月までに出そろった。

 総括委は2018年1月に米山隆一前知事が設置した。三つの検証を進める各委員会代表と池内氏の計7人で構成する。

 だが18年6月に花角英世知事が就任して以降、総括委の議題や運営方法を巡る県と池内氏の意見が対立、21年1月の2回目以降は開かれていない。

 各報告書がまとまる中、総括作業だけが宙に浮いた形になっている。膠着(こうちゃく)状態が2年余り続き、開催に向けて最後まで折り合えなかったことは残念だ。

 事態の解決に向け、県がどのような努力を重ねてきたのかが見えない。平行線のまま任期切れとなった責任は県にある。

 池内氏は柏崎刈羽原発の安全性や、東電が原発を運営する「適格性」を議題にするよう主張し、総括委として県民と直接意見を交わすタウンミーティングのような機会の設定を求めてきた。

 総括委の役割について、三つの検証の報告書をチェックするだけでなく、補完的な議論が必要な部分や専門外の問題に関して大所高所から議論するとした。

 これに対し、花角知事は「総括検証ではなくて、検証を総括する委員会」と総括委の目的を強調している。安全性や適格性については、県技術委員会などで検討されるものだとした。

 総括委がタウンミーティングのような機会を持つことには否定的で、検証結果が示された後に県民の意見を聞く場を設けるとした。

 池内氏の主張にはうなずける部分がある。安全性や適格性を検証するための論点は技術面だけではない。福島事故を受けた三つの検証結果を踏まえることで、議論はより深まるだろう。

 検証結果が出た後、県が説明会を開いて県民の意見を聞いたとしても「県民はただ従うのみになる」との池内氏の危惧は一理ある。

 これまでの委員長としての発言を、県はきちんと受け止めるべきだ。総括委の場に限らず、提起された課題の検討を求めたい。