インターネット時代の技術の進歩やサービスが可能にした不正だといえるだろう。

 徹底的な捜査で手口などを明らかにし、今後の対策に生かさなければならない。

 大学入学共通テストの試験中に世界史Bの出題内容を写した画像が外部に流出した。大阪府在住の大学1年の女子学生が警察に出頭し、関与を認めた。

 女子学生はテスト初日の15日にあった世界史Bの試験中に問題用紙を撮影。家庭教師紹介サイトで知り合った東大生2人にインターネット電話アプリ「スカイプ」で画像を送り、東大生は解答を送信した。

 女子学生は、大学入試センター側に確認作業や調査などの不必要な業務をさせた疑いが持たれている。警視庁は偽計業務妨害容疑を視野に、捜査を進める方針だ。

 まず疑問を抱くのは、カンニングなどの不正に対して厳しく目を光らせているはずの試験会場内で、どんな手法でばれずに画像を流出させ、外部とやりとりしていたかだ。

 女子学生は「1人でやった」「スマートフォンを上着の袖に隠して撮影した」と話しているという。端末の使い方など具体的な手法について詳しく調べる必要がある。

 さらに、会場の監督体制がどうだったかについても確認しなければなるまい。

 見逃せないのは、今回の不正が家庭教師紹介サイトを悪用する形で行われたことだ。

 昨年12月、「高校2年の17歳女子生徒」を自称する人物が紹介サイトに登録。東大生らに解答を事前に依頼し、「大問一つ解けるごとにまとめて送ってもらえたら」などと方法を指示していた。

 警視庁の調べでは、当日の受験者に「女子生徒」と同姓同名はなく、女子学生が偽名を使ったとみられている。

 サイトを利用する生徒には身分証明書による本人確認は求めていなかったという。それが悪用を許す結果につながったのではないか。システムの不備についてもしっかり調べ、課題を明らかにする必要がある。

 何も知らず不正に協力させられる形となった大学生は被害者と言っていい。

 サイト運営者は甘さを指摘されても仕方あるまい。今回の問題を教訓に、必要な対策を講じなければならない。

 入試を巡る不正では、2011年に京大などの問題が携帯電話から質問サイトに投稿される事件が起き、電子機器の監視が強化された。

 近年は眼鏡型や時計型といった身に着けられる「ウエアラブル端末」などの開発が進み、新たな技術を使った不正が起こらないとも限らない。

 文部科学省など関係機関は粘り強く不正防止を呼び掛けると同時に、時代に合わせた監督方法を考えることが求められる。

 大半の受験生はまじめに勉強に取り組み、ルールに従っている。知恵を絞り、公正な受験システムを守りたい。