【2021/11/19】

 11月14日に新潟市中央区で開かれた「忘れるな拉致 県民集会」。来賓席に新潟県関係衆院議員11人のうち9人が顔をそろえた。

 元参院議員で自民党の塚田一郎の姿もあった。塚田は急きょ単独で官房長官松野博一の楽屋を訪ね、面会を求めるなど新人らしからぬ所作で、2週間前の苦い体験を感じさせなかった。

夕闇に浮かぶ国会議事堂。衆院の選挙制度は曲がり角に差し掛かっている=東京・永田町

 第49回衆院選の投票箱が閉じた10月31日午後8時。直後に新潟1区で立憲民主党の西村智奈美の当選確実が報じられた。全国トップクラスの早さだった。

 塚田は午後9時の開票開始を待たず、「不徳の致すところ」と支持者らに深々と頭を垂れた。だがその約4時間後、同じ会場で安堵(あんど)の表情を浮かべ、「命を救ってもらった」と再び頭を下げた。

 西村と塚田は3万票差。塚田が議員バッジを着けられたのは比例復活制度のおかげだ。翌日、塚田は取材に「制度上認められている議席を預かった以上、責任を果たす」と意気込んだ。

 5区でも自民・泉田裕彦が1万9千票差で敗れたが、復活。報道陣に「(小選挙区では)難しいと考えていたが、比例で上がりたいと思っていた」と“比例頼み”の本音を明かした。

 現行の小選挙区比例代表並立制では、候補は比例にも重複立候補でき、選挙区で敗れても「惜敗率」が高い順に復活当選できる。

 本県の自民は小選挙区で2勝4敗と再び負け越したが、負けた4人全員が比例北陸信越ブロックでよみがえった。本県以外の小選挙区のほとんどを自民が制したため、「惜敗」とはいえない大差がついた塚田、泉田も異例の復活を遂げた。

 一方、惜敗率が2人より約10ポイント高い3区の立民・黒岩宇洋は落選。制度のひずみが表面化した。

 今回の大量復活に対しては、野党側のみならず、得をした格好の与党内からも疑問の声が上がっている。(敬称略)

<小選挙区比例代表並立制> 候補から1人を選ぶ小選挙区と、全国を11ブロックに分けて政党の得票数に応じて議席を配分する比例代表を組み合わせた衆院の選挙制度。有権者は選挙区と比例にそれぞれ1票を投じる。定数は小選挙区が289、比例代表は176の計465。本県の小選挙区は6で、比例代表の北陸信越ブロックは11。1994年に成立した政治改革関連法に基づき96年10月の衆院選で初めて行われた。