今年の大学入学共通テストが実施され、本格的な入試シーズンを迎えた。能登半島地震で被災した受験生たちは不安な思いでいるだろう。自分を信じて、落ち着いて、これまでに身に付けた学力を発揮してほしい。

 経済協力開発機構(OECD)が実施した学習到達度調査(PISA)で、日本の高校生は世界トップレベルの成績を残した。

 学力向上の結果に満足するだけでなく、行政や教育関係者は、子どもや教員が余裕を持てる教育環境を目指してもらいたい。

 PISAは各国の15歳が対象で、2022年調査は81カ国・地域が参加した。義務教育で学んだ知識や技能を実生活でどれだけ活用できるかを測る。

 日本の高校1年は読解力が前回18年の15位から過去最高の3位に大きく伸びた。数学的応用力は6位から5位、科学的応用力も5位から2位にそれぞれ上がった。

 読解力はどの教科にも不可欠な能力と指摘される。その力が付いてきたのなら喜ばしい。

 文部科学省は成績上昇について、新学習指導要領に沿って対話型の授業や探究的な学習が増えたことなどが功を奏したとみる。

 政府のGIGAスクール構想で全小中学生に1人1台の学習用端末が配備されるなど、情報通信技術(ICT)環境の整備が進んだことも要因に挙げられる。

 新型コロナウイルス感染症の影響は軽視できない。OECDは、休校期間が短い国・地域は平均得点が高い傾向だと分析する。学習機会を確保した日本の学校現場の努力は評価していい。

 ただ再び休校になった場合、生徒が自律的に学習できる自信を調べると、日本はOECD平均を下回った。教わる機会がなくとも、自ら学び取る力が求められる。

 気がかりなのは、教員らから「学校が窮屈になった」との声が漏れることだ。

 PISA順位が落ちた03年調査以降、全国学力テストが復活し、授業時間が拡大、小学校での英語教科化などが次々に進められた。

 22年度の不登校の小中学生は全国で約29万9千人、本県で約4800人、ともに過去最多となった。精神疾患を理由に休職した全国の教員は過去最多だった。

 不登校経験者も多い通信制高校は、PISAの対象外となっている。不登校が学力に及ぼす影響を把握する必要があるだろう。

 学力を伸ばすことが「正しい」と強調され過ぎ、学校が息苦しい場所になっていないか。

 オンライン授業の環境整備や、学習指導要領に縛られないカリキュラムが組める「学びの多様化学校(不登校特例校)」の設置が本県でも急がれる。

 伸び伸び過ごせる学校づくりを忘れてはならない。未来を切り開く真の学力を育みたい。