真相を明らかにするつもりなどないのだろう。そう思わずにはいられないほど、後ろ向きな対応や答弁が続いている。
野党からは脱税の疑いを指摘されている。疑念を払拭するには、自民党が自らカネの使途を公表し、説明する以外に方法はない。
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件など「政治とカネ」を巡る問題が連日、衆院予算委員会で追及されている。
自民は、政治資金収支報告書に不記載があった現職議員名などの資料を予算委理事会に追加提出したが、対応は小出しで、支出や日付の記載はない。使途も不明だ。
岸田文雄首相は「最も事情を知る本人の説明責任が第一だ」として各議員の説明を促し、党としては、聞き取り調査と全国会議員対象のアンケートを合わせて必要な説明責任を果たすとする。
だが党のアンケートは、記載漏れの有無や不記載額の記入を求めるだけで、記載漏れの経緯や理由、金の使途は尋ねていない。
表面的でアリバイ作りの印象が強い調査と言えよう。お手盛りでは真相解明など期待できない。
審議では、野党が、収支報告書の支出欄などが「不明」として訂正された例に触れ、脱税の疑いがあるのではないかとただした。
首相は「報告書は事実に即して記載されるべきもので、訂正も事実に即して記載されるべきものだ」と述べるだけで、正面から答えようとしなかった。
政党から議員個人に支出される政策活動費についても野党は「巨額で合法的な裏金」と追及する。
焦点になるのは、二階俊博氏が自民幹事長だった5年間に受け取ったとされる約50億円の使途だ。
首相は「確認するまでもなく、適切に使用されていると認識している」とするばかりで、使途公開は「政治活動の自由と密接にかかわる」として退けている。
政治活動の自由を盾に、説明拒否を押し通すだけでは、国民は納得できないだろう。
共同通信社の直近の世論調査では、政策活動費の使途公開を、9割近くが「必要だ」とした。
野党は、使い切らなかった政治資金があれば雑所得となり、納税の義務が生じると指摘した。
国税庁は答弁で、残額がある場合は、雑所得として課税関係が生じると認めている。
納税の観点からも使途は公開されるべきだ。首相は国民の知る権利に応えてもらいたい。
自民党新潟県連では、高鳥修一衆院議員が還流分を収支報告書に記載していなかった責任を取り、県連会長の辞任を表明した。
県連会長が2代続いて不祥事で辞任するのは由々しき事態だ。
自民党は腹をくくり、裏金の使途を明らかにするべきだ。まずは国会の政治倫理審査会を開き、国民の求めに応えねばならない。