危機的な人口減少対策に力点を置き、知恵と工夫を凝らした跡が見受けられる。政策を通して本県が子育て世代に選んでもらえる地域となるように、若い世代に届く情報発信と、子育て世帯を応援する機運の醸成に力を入れたい。
県は14日、2024年度予算案を発表した。一般会計は1兆2872億円で23年度当初より557億円、4・1%の減となった。
新型コロナウイルスの対策費が減ったほか、済生会新潟県央基幹病院の整備が終わり、予算編成は平時に戻った格好だ。
能登半島地震の復旧・復興や、長期化する物価高に対応する。影響を把握し、県民の生活基盤を支えてもらいたい。
中長期的な成長、発展に向けては「子育てに優しい社会の実現」「脱炭素社会への転換」「デジタル改革の推進」を柱に据えた。
最重点は子育て支援といえるだろう。花角英世知事は、その中でも子育て世代のマイホーム取得支援を目玉に位置付けた。
子どもの定期預金を通じて子育て世代の経済的負担を支援する独自策を打ち出した23年度に続く特色ある施策だろう。
マイホーム取得支援では、中古住宅を買い取って再販する業者にリノベーション代として最大300万円を補助し、子育てしやすい住宅の普及促進を図る。
その住宅に、脱炭素社会に向けた政策で県が要としている「雪国型ZEH(ゼッチ)」を導入すれば、断熱工事費としてさらに最大50万円を上乗せできる。
増加する空き家の利活用を促し、子育て支援やZEH導入が進めば、政策の効果は大きい。民間企業の活力も生かせる。
移住支援金制度も創設し、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)から子育て世代を呼び込む。
人口減少に悩むのは本県に限らず、他県もさまざまな対策を講じている。本県の優位性を知ってもらうには、若者に照準を合わせた情報発信などに工夫が必要だ。
自治体や企業とも連携し、県全体で子育て世代を応援しているというムードをつくりたい。
予算全体にはきめ細かな目配りを感じる一方、華々しさには欠ける印象だ。収入規模に見合う歳出を意識し、過剰な財政負担が生じるのを避けたためだろう。
能登半島地震の対応では、貯金に当たる財源対策的基金の一部を取り崩した。県は24年度末までに大規模災害に対応可能な230億円に積み戻すとするが、災害が頻発する中で楽観は禁物だ。
借金返済に当たる公債費の実負担は31年度にピークとなる。金利は上昇局面にあり、今後の利払い負担が膨らむ懸念がある。
新年度は経済動向を見極め、県債を前倒しで償還することも意識したい。財政健全化に資するように目を凝らさねばならない。













