小さな体で、どれほど苦しい思いをしただろうか。あまりにも痛ましい事件が続き、胸が詰まる。
幼い命を救えなかったのはなぜなのか。事件の解明とともに、関係機関の対応の在り方についても検証してもらいたい。
東京都台東区で昨年3月、当時4歳だった細谷美輝(よしき)ちゃんに、不凍液に含まれる有害物質「エチレングリコール」と抗精神病薬「オランザピン」を摂取させて殺害したとして、警視庁が今月、殺人容疑で両親を逮捕した。
警視庁によると、美輝ちゃんは自宅リビングの床におむつ姿で倒れていた。上半身は裸で、長時間寝かせたまま放置されていたとみられている。
遺体からエチレングリコールや多量のオランザピンの成分が検出された。死因は双方を摂取したことによる中毒死とみられる。
青森県八戸市では先月、5歳だった宮本望愛(のの)ちゃんが浴室で水を浴びせられて放置され、低体温症で死亡した。青森県警が今月、傷害致死容疑で母親と、その交際相手の男を逮捕した。
通報を受けて県警が到着した際の浴室の温度は10度以下だったという。望愛ちゃんの体には複数のあざがあり、日常的に虐待されていたとみられている。
2人ともまだ幼く、反抗などできなかっただろう。自宅という閉ざされた空間で残酷な仕打ちがされたとすれば許せない。
残念なのは、児童相談所(児相)が親子と接触していても、事件を未然に防げなかったことだ。
美輝ちゃんの事件では、美輝ちゃんが生まれる前に一家が住んでいた千葉県流山市の児相から、転居先の台東区に、兄姉への心理的虐待の通告があったと情報が寄せられていた。
都児童相談センターなどは、母親が精神的に不安定で「養育困難」と判断し、状況確認のための家庭訪問や電話連絡を重ねていた。きょうだい3人をセンターに一時保護したこともあった。
望愛ちゃんについても、亡くなる約4カ月前と約半年前に、ネグレクト(育児放棄)と心理的虐待で八戸市の児相に通告があった。
日常的虐待はないと判断し、児相が指導を終結したのは、亡くなるわずか1カ月ほど前だ。
傷などがあっても、保護者が子どもに話を合わせるよう指示している可能性もあり、幼児への虐待を判断するのは難しい。
たんこぶや傷について、児相に聞かれた美輝ちゃんは「公園で」と答え、「公園で転んだ」と話した父親と矛盾がなかった。
望愛ちゃんも児相の聞き取りでたたかれたことがあるか聞かれ、「ない」と話したという。
虐待は結論を急ぐと取り返しのつかない事態を招くことがある。関係機関は慎重に判断し、命を守るために力を尽くしてほしい。













