日本経済は「失われた30年」から抜け出せるのか。史上最高値を付けた株価により企業は活力を強め、大幅な賃上げの実現につなげてもらいたい。

 平均株価はようやくバブル期を超えた。これから日本経済は持続的に成長していけるかどうか、真価が問われる。

 22日の東京株式市場は、日経平均株価が終値ベースでバブル経済期の1989年12月29日を上回る3万9098円68銭となり、約34年ぶりに史上最高値を付けた。

 取引時間中にも一時、3万9156円97銭まで上がり、最高値を更新した。

 これまでの最高値は終値で3万8915円、取引時間中は3万8957円だった。

 この日の市場は、米半導体大手エヌビディアが好決算を発表したことを受け、ハイテク株を中心に幅広い銘柄が買われた。

 物価と賃金がともに上がる「経済の好循環」が訪れそうな兆しに株価が反応したと言える。

 ただ、株高の恩恵は一般市民など隅々に行き届いているとは言い難く、物価高による生活苦は長引いている。地方経済は疲弊し、能登半島地震の影響は大きい。

 日経平均は90年以降、下落基調に転じて低迷が長引いた。リーマン・ショック後の2009年3月には、終値としてバブル後最安値の7054円98銭を記録した。

 経営危機に直面した多くの企業が雇用や賃金を抑えた。消費が低迷し、モノの値段が下がり続けるデフレスパイラルに陥った。

 上昇基調を取り戻すきっかけは12年に始まった経済政策「アベノミクス」だった。13年に日銀が導入した大規模な金融緩和策も株価を支えた。

 今回の最高値更新の背景には、好調な企業業績がある。23年度の業績は過去最高水準の見通しだ。

 海外投資家が割安感のある日本株を評価しているとの見方がある。新たな少額投資非課税制度(NISA)で、市場に流入した投資マネーも株高を支えている。

 新型コロナウイルス禍後、企業の経済活動が回復し、外国為替の円安ドル高基調は輸出企業の業績を押し上げ、訪日客の増加はサービス業を支えた。

 ロシアのウクライナ侵攻後、原材料価格の高騰で企業は商品を値上げする一方、賃上げの動きも加速させている。

 好循環が実現する好機を迎えつつあるのではないか。デフレ脱却に近づいたとの受け止めが市場に広がっているのは確かだろう。

 今春闘は労使交渉の序盤で満額回答が相次ぎ、要求額を上回るケースも目立ってきた。こうした動きが中小・零細企業にまで広がるかが景気回復の鍵となる。

 強気相場の勢いに満足することなく、日本経済は実体を伴った成長を目指さねばならない。