城之内庸仁さん
城之内庸仁さん

 さまざまな事情で義務教育を受けることができなかった人に学びの場を-。全国で公立の夜間中学の設置が相次ぐ中、未設置の県内でも新潟県新発田市で市民らがつくる「新潟県新発田市に夜間中学校の設置を求める会」が今夏発足し、学習会を開催するなどの活動を始めた。夜間中学を設置する意義と課題について、一般社団法人基礎教育保障研究所(岡山市)理事長で、新発田市での学習会で講師を務めたこともある城之内庸仁(しろのうち・のぶひと)さん(48)に聞いた。(新発田総局長・阿部慎一)

-公立夜間中学の設置状況はどうなっていますか。

 2024年4月時点で全国に52校ある。2016年に教育機会確保法が成立し、21年には菅義偉首相(当時)が、今後5年間で全都道府県と政令市での設置を目指すと言明した。ただ設置するのは自治体で、温度差もある。ボランティアらが担う自主夜間中学は全国に30〜50あるとされる。私が運営している岡山自主夜間中学を含め、多くがスタッフの善意に支えられているのが実情だ。

-新発田市では、市民や大学教授らで組織する「求める会」が活動を展開しています。

 市民レベルの動きが出てきたことは喜ばしい。20年の国勢調査によると、新潟県で最終学歴が「小卒」と未就学者の人は約3万6千人で全国5位、新潟市も約8700人で政令市の中で5位の多さだ。潜在的なニーズはある。8月の学習会には若者の姿もあった。学びの場をつくりたいという志を持った人がいることが分かった。

-新発田市で会ができた意義をどう捉えますか。

 公立の夜間中学は大都市以外にも設置されている。私が設置にかかわった香川県三豊市は人口約6万人だ。市民の熱意と行政の決断によるところが大きい。新発田市は県北地域と新潟市の間にあり、交通アクセスも比較的良い。上中越のニーズをどう受け止めるかという課題は残るが、まずは設置に向けた第一歩を踏み出すことが大切だ。

-夜間中学の設置にはどんな課題がありますか。

 存在自体が知られていない。どんなことをしているのかも。公立の場合、所定の課程を終えれば中学卒業の資格が得られる。学校行事もある。

 設置自治体以外から通う生徒の負担の問題もある。他県の事例では、設置自治体と近隣の市町村が協定を結んだ上で利用者の住む自治体が費用を負担しているケースもある。設置の際の参考になるのではないか。

 併せて「なぜ義務教育を受けられなかった人がいるのか」という...

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