操舵室に設置されたディスプレーの数々。白瀬忠さんは最新機器を駆使し、スルメイカを追う=2024年12月、佐渡市の姫津漁港
操舵室に設置されたディスプレーの数々。白瀬忠さんは最新機器を駆使し、スルメイカを追う=2024年12月、佐渡市の姫津漁港

 温暖化をはじめ、さまざまな要因が絡み、海や川の環境が変わっています。魚や海藻といった恵みにも響き、食文化に関わってきています。海や川が発するシグナルには、いろいろな警告やメッセージがあるはず。長期企画「碧(あお)のシグナル」では、それを読み解きながら、次代に恵みをどうつなぐのか探ります。初回シリーズ「変わる新潟の魚影」では、漁師らの思いに迫ります。(8回続きの8)

 夏の夜の海に、スルメイカを狙う漁船のいさり火が輝く-。そんなイメージを覆すイカ漁のスタイルがある。

 新潟県佐渡島の外海府にある姫津集落。古くからの漁村でイカ釣り漁で栄えてきた。漁港には大小の船が並ぶ。その中の1隻の「第21佐光丸」。一見すると、白を基調とした10トン級の普通の小型漁船だが、操舵(そうだ)室に入ると印象はがらりと変わる。

 魚群探知機、海中を音波で探るソナー、レーダー、潮流計。それぞれの情報を示す十数個の画面が、所狭しと並ぶ。さながら航空機のコックピットだ。「画面を見ながら、スルメイカを探すんだ。いい機械を入れると取れるから面白い」と漁師の白瀬忠さん(71)は言う。

 夜ではなくて日中に漁をする「昼間イカ漁」の大きな武器。数千万円ほどで整えた。50年を超えるキャリアで培った経験を重ね、海の中のスルメイカに迫る。

 新潟県内でイカ釣りを専業とする船の大半は佐渡を拠点とする。その主軸が姫津だ。「20年ほど前に始めた」という白瀬さんら、ここで稼働する5隻ほどのイカ釣り漁船すべてが、昼間の漁をやっている。

 姫津漁業協同組合の組合長の水野信明さん(64)は「夜のイカ釣りをしている船もある。ただ昼の方が経費が少なくて済み、効率がいい」と説明する。

 夜の漁では、海で船を泊めて明かりを付け、イカを集める。発電のためにエンジンを回し続け、燃料を消費する。スルメイカの価格が安かったり、燃料代が上がったりした時は...

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