
寒ブリのイベントで並んだ柵切り。例年通りなら地元で水揚げされた丸々一本のブリが並んだはずが… =2024年12月、佐渡市の鷲崎漁港
温暖化をはじめ、さまざまな要因が絡み、海や川の環境が変わっています。魚や海藻といった恵みにも響き、食文化に関わってきています。海や川が発するシグナルには、いろいろな警告やメッセージがあるはず。大型企画「碧(あお)のシグナル」では、それを読み解きながら、次代に恵みをどうつなぐのか探ります。初回シリーズ「変わる新潟の魚影」では、漁師らの思いに迫ります。(8回続きの4)
2024年12月8日に佐渡市鷲崎漁港で開かれた恒例の「佐渡海府寒ぶり大漁まつり」。雨模様だったが、続々と人が訪れる。「すしや刺し身で食べるのが好み。地元で豊漁になってほしい」と寒ブリの柵を購入した市内の酒造会社勤務の男性(27)は期待した。
ただブリはここの港でなく、他で揚がったもの。実行委員長を務めた内海府漁業生産組合の組合長、本間信俊さん(65)は「ブリの漁期が遅れており、例年より1週間後ろにしたが、入らなかった」と語る。

「ブリの資源量自体は今、豊富な時期と言える」。国の水産資源研究所(横浜市)の主任研究員、倉島陽(あきら)さん(39)=新発田市出身=は説明する。資源量とは、ブリがどれだけ海にいるかの推計だ。日本周辺海域の資源量を見ると、05年を境に増加傾向で、10年以降は30万トンを常に超える。
転換点は「05年」と強調する。要因になり得るのは、一つは魚を取る量や強さを示す「漁獲圧」の低下だが、これには疑問を呈す。「この年に漁獲面で大きなインパクトがあったという話はない」。自然界で資源増加につながる何かのきっかけがあったとみる。
一方、暖水性のブリと温暖化を巡る関係について「分布域の拡大との関連はある」と指摘する。日本近海の...
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