
香山リカ
「若者はどうなっているのか」という声をシニア世代から聞く季節が今年もやって来た。
新年度を迎え、「出社1日で退職した新入社員がいる」「若手社員が上司にLINEで退職願を送ってきた」「退職代行サービスを使って退職する若者が増えている」といった記事や投稿がウェブメディアやSNSに増え、「信じられない」から「仕方ない」までさまざまな感想が語られている。
しかし、こういった若者の傾向は、今になって始まったことではない。1986年に精神科医の稲村博が『機械親和性対人困難症』、94年には教育学者の千石保が『マサツ回避の世代:若者のホンネと主張』という著作を出し、メディアには濃厚にかかわるが現実の他者を避...
残り709文字(全文:1009文字)