イノシシが踏み荒らしたあぜ、食い散らかされた農作物…。中山間地の住民は、ため息交じりに口をそろえる。「昔はいなかったのに」。新潟市のど真ん中に出没するなど野生動物であるイノシシがまちなかでも目撃されるようになった。その生息域と人里との境界が曖昧になった背景には人口減少の影がある。被害に直面する現場を訪ねた。(文・川島薫、写真・永井隆司=いずれも新潟日報上越支社)=5回続きの4=

【2023/03/07】

 「これから追います」

 曇り空の下、時折吹雪が視界を奪う山中で、イノシシを追う勢子(せこ)の声が無線で飛んだ。麓では新人ハンターたちが待ち構える。猟銃を握る手に汗がにじむ。

 2月26日、新潟県上越市柿崎区の山中で、県と県猟友会が共催し、免許取得から5年以内の新人を対象とした「フレッシュハンター大型獣巻狩り実践研修会」が行われた。

 「東の方に2匹」「4班の方、行ったぞ」。無線が飛び交う。1時間半ほどして、新人ハンターの一人、新潟市秋葉区の髙橋善博さん(50)が、山肌を駆けるイノシシを銃口の先に捉えた。2発の銃声がこだました。...

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