大規模な金融緩和を抜け出し、政策を本来の姿に戻す「出口」は見つかるか。

 約25年間続けてきたさまざまな金融緩和策の効果と副作用をきちんと検証し、今後の政策運営に生かしてもらいたい。

 日銀は植田和男総裁の就任後初めてとなる金融政策決定会合を開き、金融緩和策の多角的なレビュー(検証)を1年から1年半程度かけて行うと決めた。

 前任の黒田東彦氏が10年間講じてきた大規模金融緩和策を含め、1990年代後半以降の金融緩和策を検証する。

 99年のゼロ金利政策導入以降、日銀は量的緩和や量的・質的金融緩和、マイナス金利政策など異例の金融緩和策を続けてきた。

 レビューは植田氏が大規模緩和の「副作用」を重く見ている表れだろう。放置すれば、副作用が緩和効果を上回る恐れがある。

 日銀が国債を大量に買って金利を極めて低く抑える現行の緩和策で、日銀の国債保有比率は異常な高水準になっている。

 副作用は市場のゆがみや財政規律の緩みという形で現れた。

 昨年12月に日銀が長期金利の上限を引き上げ、ゆがみが目立たなくなった今こそ、将来の「出口」に向けた布石を打つべきだと植田氏が判断したともみられる。

 記者会見で植田氏は、レビューについて「特定の政策変更は念頭に置いていない」と述べ、必要な場合には検証期間中でも政策変更を行うと強調した。

 適切なタイミングで副作用を軽減する措置を講じるのは当然で、こうした措置につながる検証作業の開始は評価できる。

 金融緩和の修正は今回、見送られた。短期金利をマイナス0・1%とし、長期金利を0%程度に誘導する現行の政策を維持する。

 海外の金融不安の行方を見極める必要もあり、大規模緩和を当面維持することは妥当な判断だ。

 市場関係者には次回会合の6月以降、修正に動くとの見方がある。一方、来年の春闘で賃上げ継続を確認するまでは慎重になるとの推測も出ている。

 植田氏は市場の裏をかく「サプライズ」を多用せず、市場が困惑しないよう対話を重視しながら政策決定してもらいたい。

 修正のタイミングを計るのは容易ではない。日銀は前年度比2%の物価上昇率を目標とするが、拙速に金融を引き締めれば、2%の物価安定目標を実現できなくなるリスクがあるからだ。

 今回初めて示された2025年度の物価上昇率見通しは1・6%で、23、24年度より低くなると見込んだ。安定的な目標達成にはまだ距離がある。

 物価上昇に見合う賃上げが続いて消費を支え、企業収益が増えて賃金や物価が適度に上がる好循環の実現が欠かせない。