県内企業の景況感の改善が続いている。約3年にわたる新型コロナウイルス禍を経て、県内経済が上向き基調にあることを反映した。成長への軌道に乗せるため、将来を見据えた投資と賃上げに努めることが重要になる。
日銀新潟支店が発表した9月の県内企業短期経済観測調査(短観)は、全産業の業況判断指数(DI)が前回6月調査から3ポイント改善し、プラス3となった。
改善は2期連続で、2019年3月以来、4年半ぶりにプラス圏に浮上した。業況が良いと考える企業が、悪いと考える企業より多くなったことを意味している。
背景にあるのはウイルス禍が落ち着き、経済活動が正常化してきたことだ。ロシアのウクライナ侵攻に伴う原材料価格の上昇を製品価格に転嫁する動きが進んだことも改善に寄与した。
県内にはウイルス禍の行動制限などを捉えて業績を伸ばした企業もあったが、全体としては厳しい状況が続いてきた。ようやく見えてきた回復基調を確実なものにし、さらなる成長を目指したい。
そのために欠かせないのが投資だ。今回の短観で県内企業の設備投資計画は前年度比14・7%増、研究開発投資計画は6・9%減となっている。
利益を必要以上に内部留保するのではなく、デジタル化や人口減少社会などに対応し、将来の成長につながる投資戦略を描くことが重要になる。
従業員の賃上げにも積極的に取り組んでもらいたい。県内短観では人手不足感が1991年11月以来の水準となった。人材を確保するためにも、ひいては本県の課題である人口流出を防ぐためにも、賃上げの意義は大きい。
原材料費の価格転嫁は、消費者に重い負担を強いている。物価と賃金が安定的に上昇する経済の好循環をつくっていきたい。
県内短観の内訳は製造業が3ポイント改善のマイナス1、非製造業は2ポイント改善のプラス6となった。
業種別では繊維や木材・木製品、輸送用機械などが改善した。宿泊・飲食サービスは36ポイントの大幅改善でプラス18となった。
今後、新潟空港を拠点とする格安航空会社トキエアの就航や韓国ソウル線の再開が予定される。本県観光の売りであるスキーの季節は間もなくだ。外国人を含め多くの観光客を呼び込みたい。
県内の景況感が改善したとはいえ、全国に比べればまだ遅れている。今夏の記録的な猛暑により県産米の等級が低下しており、農家の収入減なども懸念される。
3カ月後の業況判断DIは3ポイント悪化する見通しとなっている。
世界経済の減速懸念や一時1ドル=150円台を付けるまで進んだ円安の影響などで予断は許さない状況だが、リスクを管理しながら着実に回復の歩みを続けたい。