
国と新潟県による原子力災害に備えた訓練で、乗用車を簡易除染する=10月29日、上越市の直江津港南ふ頭緑地公園
東京へ、首都圏へ世界最大級の原発は電気を送り続けた。新潟県に建つ東京電力柏崎刈羽原発。一体誰のための原発なのか。何をもたらしたのか。新潟日報社は長期企画で、新潟から原発を巡る疑問を考えていく。プロローグでは「住民避難」を考える=敬称略=。(住民避難編・10回続きの5)
吹き付ける潮風の音に混じり、エンジン音がうなりを上げた。海から砂煙を上げて浜辺に現れたのは自衛隊の水陸両用船。普段着姿の住民たちが乗り込んでゆく。互いの話し声が聞こえないほどのごう音が響く船内で、一様に耳栓をし、視線を落として出発の時を待った。
2023年10月下旬、東京電力柏崎刈羽原発...
残り868文字(全文:1168文字)