東京へ、首都圏へ世界最大級の原発は電気を送り続けた。新潟県に建つ東京電力柏崎刈羽原発。一体誰のための原発なのか。何をもたらしたのか。新潟日報社は長期企画で、新潟から原発を巡る疑問を考えていく。プロローグでは「住民避難」を考える=敬称略=。(住民避難編・10回続きの7)
静かな港に、漁を終えた船が続々と戻ってくる。2023年11月2日早朝、福島県のある漁港。地元漁師たちは、この時期よく取れるというヒラメやカレイ、近年かかるようになったトラフグを水揚げしていた。
この日、東京電力は福島第1原発の処理水東京電力福島第1原発1~3号機の溶融核燃料(デブリ)を冷やす注水などが原因で発生した汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化した水。トリチウムは除去できず、他の放射性物質もわずかに残る。敷地内のタンクでの保管量は約134万トンと容量の98%に達し、2023年8月24日に海への放出を始めた。の3回目となる海洋放出福島第1原発事故によって発生し続ける汚染水から除去できる放射性物質を取り除いた「処理水」を薄めて海に流すこと。除去できないトリチウムの濃度が国の基準の40分の1未満になるよう海水で薄めて放出する。東電の計画では2051年まで続ける。を始めた。海底トンネルを通じ、1日460トンのペースで太平洋の沖合1キロから流し、約20日間で合計約7800トンを放出した。
処理水放出を巡っては安倍晋三政権時代の2015年、政府と東電が漁業者に対し「関係者の理解なしに(処理水の)いかなる処分も行わない」と約束していた。しかし、政府の姿勢に対する異論が...
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