
東京へ、首都圏へ世界最大級の原発は電気を送り続けた。新潟県に建つ東京電力柏崎刈羽原発。一体誰のための原発なのか。何をもたらしたのか。新潟日報社は長期企画で、新潟から原発を巡る疑問を考えていく。プロローグでは「住民避難」を考える=敬称略=。(住民避難編・10回続きの8)
東京電力福島第1原発事故から4年を迎えるのを前にした2015年1月、柏崎市で開かれた住民説明会。東電は柏崎刈羽原発6、7号機の新規制基準東京電力福島第1原発事故を教訓に、原子力規制委員会が策定した新たな基準。従来の指針などが見直され、原発の重大な事故への対策や、地震、津波対策を強化した。原発を再稼働させるためには新基準に適合していることが条件となった。審査は原子力規制委員会が行う。への適合審査状況を説明した。
「自治体が避難計画原発などの事故時に住民らが避難する先や経路、移動手段などを盛り込んだ計画。原子力災害対策指針に基づいて原発の立地自治体や周辺自治体が策定する。福島第1原発事故後に住民避難などの対策を求められる範囲が原発の半径10キロ圏から30キロ圏に拡大された。計画は首相をトップとする原子力防災会議が了承する。規制委の審査対象とはなっていない。は十分でないと考えるなら、原発を再稼働するべきではない」。常務(当時)の姉川尚史(66)は、参加者の質問に答える形でこう述べた。
自ら再稼働への条件を示したかに聞こえる当時の姉川の発言について、東電新潟本社は「法令で求められている避難計画が策定されていない状況では、再稼働はできない」との趣旨だったと説明する。
当時、原発事故時に原則屋内退避となる半径5〜30キロ圏原発などで事故が発生した場合に防護措置を行う区域の一つ。UPZとも呼ばれる。UPZは、英語のUrgent Protective action planning Zone=緊急防護措置を準備する区域=の頭文字。放射性物質が放出される前に屋内退避を始め、線量が一定程度まで高くなったら避難などをする区域。の市や町では、避難計画がほぼ策定されていなかった。現在は即時避難の5キロ圏原発などの施設で異常事象が発生した際、事故のレベルに基づいて、放射性物質放出の有無にかかわらず屋内退避、避難などの予防的防護措置が迅速に行えるように準備する区域。新潟県内では「即時避難区域」。PAZとも呼ばれる。PAZは、英語のPrecautionary Action Zone=予防的防護措置を準備する区域=の頭文字。を含め全9市町村で計画が整備されている。

現状をどう捉えているのか。東電新潟本社は...