空港や地域の活性化へ夢が広がる。課題はあるが、オール新潟で翼を育んでいきたい。
新潟空港を拠点とする格安航空会社トキエア(新潟市東区)が、同社初の路線となる丘珠(おかだま)(札幌市)線を就航した。
大手傘下でない独立系航空会社の国内線参入は、2009年のフジドリームエアラインズ(静岡市)以来15年ぶりとなる。
当初の就航予定は23年6月だったが、国との調整の難航などで延期を重ねてきた。約7カ月遅れではあるが、一歩を踏み出せたことを歓迎したい。
羽田空港では衝突事故があった。安全運航が最大のサービスだ。気を引き締めて臨んでほしい。
大手が運航する既存の札幌(新千歳)線と競合するものの、トキエアは片道6900円からの格安運賃設定で優位性を打ち出す。
運賃を抑えられるのは、機材をジェット機ではなく小型プロペラ機としたことが大きい。運航コストや着陸料が安くなるからだ。
長谷川政樹社長は「若い人がお小遣いで乗れるようにしたいという思いがある」と語る。
地方路線は競争が少ないため運賃は高い傾向にあるが、格安設定の選択肢を増やすことで、旅行頻度が高まり、需要が生まれる可能性はあるという。
当面は金-月曜の週4日、1日2往復運航する。4月ごろに仙台、その後は中部国際(愛知県)、神戸の各空港への路線も就航させる計画だ。佐渡空港と新潟、東京方面を結ぶ路線の24年中の就航も目指している。
一方、路線の維持には課題がある。搭乗率の向上がその一つだ。丘珠線は就航日の初便こそ満席だったが、2月の予約は目標の7割に届いていない。
北海道に行く県民を増やすほか、道民にも多く来てもらい、双方向の往来を活性化していくことが欠かせない。官民で連携し、本県の魅力を継続的に発信したい。
トキエアは就航延期を重ねて人件費などがかさみ、財務基盤の立て直しに向けた収益確保が求められている。複数の機材をフル稼働させる路線拡大が前提となる。
路線拡大には人材確保が必須だが、新型コロナウイルス禍後の航空需要回復で採用は厳しくなっているという。
トキエアは県内外約150の株主や県、金融機関などの支援を受けている。経営安定化に向けては同社の努力に加え、さらなる支援の輪の広がりも大事だ。
新潟空港では、ウイルス禍後は相次いで国際線が復活しており、トキエアが利用者をさらに押し上げるとの見方がある。
路線網が拡大されて需要が伸びれば、地域経済が活力を取り戻す起爆剤にもなり得るだろう。
地方発のベンチャー航空会社として飛躍してもらいたい。