東京電力柏崎刈羽原発の6、7号機
東京電力柏崎刈羽原発の6、7号機

 2024年は政府が新潟県や柏崎市、刈羽村に対し、東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。再稼働東京電力福島第1原発事故を踏まえ、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。に同意するよう要請する大きな局面を迎えた年だった。政府は年内再稼働のシナリオを描いたものの、24年1月1日の能登半島地震2024年1月1日午後4時10分ごろに発生した石川県能登地方を震源とする地震。逆断層型で、マグニチュード(M)7.6と推定される。石川県輪島市と北陸電力しか原発が立地する志賀町で震度7を記録し、北海道から九州にかけて揺れを観測した。気象庁は大津波警報を発表し、沿岸部に津波が襲来した。火災が相次ぎ、輪島市では市街地が広範囲で延焼した。を受けて、新潟県民の中で原発事故時に安全に避難ができるのかとの不安が高まった。鍵を握る花角英世知事が再稼働の是非を判断できる状態にならないまま年を越した。2025年春ごろには花角知事の判断材料が出始めるとみられ、政府の働きかけがさらに強まる可能性がある。(報道部・遠藤寛幸)

 再稼働議論が本格化するきっかけになったのが、斎藤健経済産業大臣(当時)の要請だった。3月18日、斎藤氏は花角知事らに電話で再稼働への理解を求めた。3日後には村瀬佳史・資源エネルギー庁長官が新潟県を訪れて花角知事に文書を手渡した。

 「(政府が)ボタンを押した」。花角知事が12月25日の定例記者会見でこう表現したように、政府の動きは要請を境に活発化していく。

 水面下ではエネ庁幹部が新潟県庁や県議会を定期的に訪れ、県幹部や自民県議団との意思疎通を図った。関係者によると、当初政府内には、電力需要が高まる夏を前にした県議会6月定例会で花角知事が再稼働を容認する、とのシナリオがあったとされる。

新潟県議会の議場

 この1年、再稼働の是非を巡る花角知事の姿勢は一貫していた。「再稼働に関する議論を深め、県民がどう受け止めるか見極めたい。どこかで結論を出し、県民の意思を確認する」。背景には、能登半島地震を受けて県民の間で広がった避難への不安がある。

 首都圏の電力供給を安定させたい政府は6月、県や柏崎市、刈羽村が要望していた北陸道へのスマートインターチェンジ新設などについて全額国費で...

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