路線バスや区バスが通る「能登バスタ」=4月、新潟市南区能登2
路線バスや区バスが通る「能登バスタ」=4月、新潟市南区能登2

 新潟市8区の中で唯一鉄道の駅がない南区。バスが公共交通の要だが、利用客の減少やドライバー不足などで路線バスの便数は年々減り、高齢者や学生にとっては生活に直結する悩みになっている。

<1>都市機能が集中する中央区、実は買い物事情が深刻に…高齢化が進む街でどう工夫?

 平日だった4月28日の午前7時半、新潟市役所前では南区から来る大野・白根線のバスが続々と到着していた。南区から中央区の高校に通う女子生徒(15)は「朝は便数が多いが、昼は本当に少ない。学校が午前終わりだと大変」とこぼした。この路線は朝は10分に1本ほどあるが、昼は1時間に1、2本だ。

 午前9時、市役所前から南区行きのバスに乗ってみた。西区を経由して南区に入ると、国道8号は片側2車線から1車線に減る。十数人いた乗客もまばらになっていく。約1時間後、区の公共交通ガイドに「能登バスタ」と記載されたバス停で降りた。路線バスや区バスの大半が止まる。バスターミナルをイメージした名前だろうが、見た目は普通のバス停だ。

 南区能登の女性(82)が午前11時半ごろ、バス停前の塀に腰かけ、秋葉区に向かう矢代田線を待っていた。手芸の講師を長く務めていた女性は展示会の準備のため、三条市中心部に行くという。直線距離で約20キロ、車なら30分ほど。しかしバスで直接行く路線はない。

 女性はJR矢代田駅(秋葉区)からは電車に乗り、合わせて2時間かかる。矢代田線が運休の休日は加茂駅まで別路線のバスで行き、電車に乗り換える。「とにかくバスが減った。バス会社も大変だから、時流ね。行く末が心配」と嘆いた。

 南区では近年、地域交通を便利にしようと、交通結節点やバスターミナルを設け、路線バスや区バスを集約、増便などに充てる構想があった。にぎわいにつながり、民間の開発と絡める案もあった。

 白根青年会議所など23団体でつくる「にいがた南区創生会議」が構想をまとめ、2020年に市へ提言書を提出した。だが、ハード面の整備を伴う事業は費用や用地面で壁が高く実現していない。区は中心部での区バスと路線バスとの乗り継ぎを便利にすることで対応。ソフト面の運用が「能登バスタ」の意味だった。

▽高齢者の手伝いサービスで移動支援

 午後1時過ぎ、区バスにも乗った。郊外の...

残り969文字(全文:1912文字)