「到来する女たち」
 「到来する女たち」

 人間集団は中心を作り、中心は周縁を生む。しかしそうした周縁こそが、社会にダイナミズムを与えるのだと唱えたのは今は亡き文化人類学者の山口昌男だった。「女たち」は歴史の中で周縁に追いやられてきた。その小さな声に耳をそばだて、物語を紡いだ3人の作家の軌跡を本書はたどる。浮かび上がるのは、彼女らが創造/想像した「わたしたち」の思想だ。

 取り上げられるのは、昭和から平成にかけて活躍した中村きい子、石牟礼道子、森崎和江の3人の女性作家。彼女らは同時代を生き、同じ時期に九州の文芸誌「サークル村」に文章を寄せていたという共通項を持つ。

 彼女らを結ぶ線はそれだけではない。3人はそれぞれ、「聞き書き」という実践...

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