終戦から80年。戦時中の日本では軍事、政治、経済、文化といったさまざまな分野の力を結集した総力戦が展開された。国家総動員法の下、国民も戦争への協力を求められた。人々は嫌々従ったのだろうか。必ずしもそうではなかったと私は考える。庶民も下支えしたからこそ軍国主義は勢いを得て、社会の隅々にまで浸透した。ある人物を例に考えてみる。
岩手県・旧藤根村(現北上市)出身の高橋峯次郎(1883~1967年)は地元で小学校教員を務めた。熱のこもった指導で児童に慕われるとともに、故郷を愛し地域活動にも関わった。日露戦争で召集されて戦闘を経験し、元兵士の集まりである在郷軍人会の分会長にもなった。
彼は日中戦争で出...
残り893文字(全文:1193文字)