「軽自動車を作った男」
 「軽自動車を作った男」

 今や生活に不可欠な自動車は、高齢化に反比例するように縮小する公共交通サービスの影響などで「一家に一台」どころか「一人一台」必要な時代だ。そんな生活の足を支える軽自動車。排気量は小さいが、価格は安く、税金までお財布に優しい庶民の味方だ。本書は文字通り、そんな軽自動車を作った男の評伝だ。

 昨年末、スズキ(浜松市)で長らく陣頭指揮を執った鈴木修が94歳で死去した。しかしその伝記はほとんど出版されていない。最後まで「現役の経営者だったから」と著者は記す。「運が良かった」で片付け、手柄話もしない人だったと言う。

 鈴木は、軽自動車生産のトップシェアを誇るスズキの「中興の祖」とされる。悪路に強い「ジムニー...

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