
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に同意するのか、しないのか-。国からの要請を受け、新潟県は選択を迫られています。花角英世知事は県民の受け止めを見極めて判断すると公言し、その判断材料は間もなくそろう見通しです。再稼働の是非は知事の政治判断に委ねられていますが、肝心の新潟県民はどう考えているのでしょう。新潟日報の記者が全37市区町村、県内津々浦々を訪ね、再稼働問題への率直な意見に耳を傾けます。 初回は新潟市中央区です。
◆「ちょうど調査票を返送したばかりなのよ」
漫画家水島新司さんの代表作「ドカベン」のキャラクター像などが商店街に立ち並びます。ここは新潟市中央区古町。県外からの観光客が、葉っぱをくわえた岩鬼正美の前で記念撮影をしていました。残暑厳しいこの日は連休明けの平日で休みの店も多く、通りは静かです。

「ちょうど調査票を返送したばかりなのよ」。新潟市中央区の無職女性(80)と出会いました。県は現在、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題に関して県民意識調査を実施中です。「難しそうでちょっと放っておいたんだけどね。やっぱり自分の考えを示した方がいいと思って」
女性は再稼働に反対だそうです。思い出すのは2011年の東電の福島第1原発事故の際、福島県から大勢の人が新潟県内に避難してきたこと。「事故が起きたら大変なことになる。原発なんてない方がいい」と力を込めます。
◆「安全と判断したなら早く動いてほしい」

一方で現役世代からは再稼働を容認する声が多く聞かれました。新潟市中央区の男性(38)は「専門家が安全と判断したなら早く動いてほしい」と話します。製造業の会社に勤めており、電気代の高騰は社業に関わる問題です。「電力不足は風力や太陽光発電では賄いきれない」と考えています。

続いて声をかけた会社員男性(32)は、大阪から1年前に中央区に引っ越してきたばかり。落ち着いた新潟の生活を気に入っているそうです。「柏崎の原発の存在は知っているけどあまり情報を持っていなくて…。安全であれば動かしていいんじゃないか」と言います。同じく中央区の30代会社員女性も「こんな暑い日はクーラーがないと熱中症になってしまう。電気を使わないわけにはいかないし、現状では再稼働はしょうがないのかな」と話しました。
◆「知事は頼りないよ。国の言いなり」

「知事は頼りないよ。国の言いなりになっている」と憤るのは新潟市中央区の無職男性(69)です。男性は建設会社に勤めていた時、稼働中だった柏崎刈羽原発に出入りしていました。「ごみ一つ落ちていない。きれいすぎて不気味なほどだった」と振り返ります。セキュリティーの厳しさも印象に残っているそうです。
しかし近年IDカードの不正利用などテロ対策の不備があり、東電への不信感が拭えないと言います。男性はつぶやくように希望を託しました。「県民投票をやってほしかった。来年の知事選では、再稼働に反対する人が出てきてほしい」...