政府や東京電力は需給の逼迫解消や低廉な電気の提供、脱炭素の実現に向け、新潟県に立地する柏崎刈羽原発の再稼働が必要だと訴える。長期企画「誰のための原発か 新潟から問う」の今シリーズでは、国や事業者が「常識」とばかりに並べる再稼働の理由を検証する。(6回続きの6)=敬称略=

 「腰を据えた国民的議論をしていただきたい」。3月下旬、新潟県柏崎市の松波コミュニティセンターで開かれた東京電力柏崎刈羽原発1985年に1号機が営業運転を開始した。全7基の出力合計は821・2万キロワットで世界最大級だが、2023年10月現在は全基停止中。東京電力は2013年に原子力規制委員会に6、7号機の審査を申請し、17年に合格した。その後、テロ対策上の重大な不備が相次いで発覚した。終了したはずだった安全対策工事が未完了だった問題も分かった。再稼働東京電力福島第1原発事故を踏まえ、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。を巡る市民懇談会。市長の桜井雅浩(62)は市民44人を前に、国のエネルギー政策に対する自身の考えを述べ、こう締めくくった。

 「納得のいく議論がなされるなどしたならば、柏崎市はこれまで以上に国のGX(グリーントランスフォーメーション)英語で環境に優しいという意味の「Green(グリーン)」と、変化を意味する「Transformation(トランスフォーメーション)」を組み合わせた言葉。「Trans」を「X」と表記するケースがあり、GXと略す。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出削減に向け、石油や石炭といった化石燃料から、太陽光や風力などのクリーンエネルギー中心の社会への転換を目指す。岸田政権は成長戦略の一つに掲げている。、エネルギー政策の一端を担う覚悟がある」

 桜井が...

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