政府が再稼働を推進している東京電力柏崎刈羽原発。原発回帰のエネルギー基本計画を根拠に新潟県への働きかけを強めるとみられる(新潟日報社ヘリから)
政府が再稼働を推進している東京電力柏崎刈羽原発。原発回帰のエネルギー基本計画を根拠に新潟県への働きかけを強めるとみられる(新潟日報社ヘリから)

 政府は、2月18日に閣議決定したエネルギー基本計画政府が定める中長期的なエネルギー政策の指針。原発や再生可能エネルギー、火力といった電源ごとの見通しや課題に加え、東京電力福島第1原発事故からの復興方針や鉱物資源の確保など幅広く言及する。民間企業の投資計画に影響を及ぼす。エネルギー政策基本法に基づいて2003年に初めて策定し、おおむね3年ごとに見直す。今回は第7次計画となる。で原発回帰を明確にした。この中長期的なエネルギー政策の指針を根拠に、東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。再稼働東京電力福島第1原発事故を受け、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。に向けた新潟県への働きかけをさらに強めそうだ。

 基本計画では2011年の東電福島第1原発事故2011年3月11日に発生した東日本大震災の地震と津波で、東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の6基のうち1~5号機で全交流電源が喪失し、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。1、3、4号機は水素爆発し、大量の放射性物質が放出された。を受けて原発を低減するとしていた表現を撤回し、データセンターの新増設で電力需要が増える想定や脱炭素などを理由に「最大限活用」へ転換した。「国が前面に立ち」、規制基準に適合した原発の再稼働を進める方針も改めて明記された。

 柏崎刈羽原発については、経済産業省資源エネルギー庁が2月上旬までの約2カ月、再稼働への理解を求めて県内28市町村を回る異例の住民説明会を実施。担当者は、エネルギー基本計画の原案も示しながら「東日本の電力の安定供給に重要」などと説いた。

 原発回帰は2022年、岸田前政権が脱炭素社会の実現に向けた基本方針で原発活用に転じ、流れをつくった。これを機に政府は柏崎刈羽原発の再稼働に本腰を入れ、24年には個別の原発を議題とする異例の原子力関係閣僚会議を開き、理解活動を進めてきた。...

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