
三井住友海上で顧客の電話に対応する小林聡さん。働きながら心臓移植の日を待つ=新潟市中央区
国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者になろうとしている2025年、高齢者に多い疾患を巡り、県内の医療機関がある事態に危機感を募らせている。心臓の機能が低下し、さまざまな症状を引き起こす心不全何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下し、臓器をはじめ全身に必要な血液を十分に送り出せなくなる状態のこと。病名ではなく、心筋梗塞など心臓のさまざまな病気や高血圧などにより、負担がかかった状態が最終的に至る「症候群」と捉えられている。息切れやむくみ、疲労感など、さまざまな症状が引き起こされる。患者の急増だ。病床数には制約があり、治療する循環器医は医師少数県の新潟県でも特に少ない。「心不全パンデミック(大流行)」に直面する循環器医療の現状と課題を追った。
新潟市中央区の三井住友海上新潟保険金お支払センター。顧客からの電話に対応する社員の中に、補助人工心臓(VAD)弱った心臓の代わりに血液を全身に送り出す機械。植え込み型は、体の中に血液ポンプを装着し、体の外に血液ポンプを動かすコントローラーと電源バッテリーを装着する。(※ページ下部に詳細)を装着する小林聡さん(55)=同市江南区=の姿がある。働きながら、心臓移植ができる日を待つ。
小林さんは、指定難病の「特発性拡張型心筋症」を患う。心臓の筋肉の収縮能力が低下し、左心室が拡張してしまう病気だ。
学生時代はラグビーに熱中したスポーツマン。大学卒業後に入社した県内の百貨店では、外商などの仕事を精力的に取り組んだ。
生活が一変したのは、2012年。せきや倦怠(けんたい)感、めまいなどの症状が表れ13年1月に診断を受けた。
薬物治療でしばらく安定していたが、三井住友海上に転職した後に症状が悪化。21年1月に新潟大病院に再入院し、...
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