1954年、3代目髙澤徳二郎氏の長男・英介氏が早稲田大学を卒業する。「明日からおまえがこの蔵をやってほしい」。早世した夫に代わって蔵を切り盛りしてきた母のチヨさんから通帳と印鑑を手渡された英介氏。23歳で菊水酒造の4代目となる。

 英介氏は、「家業」から「企業」へと発展させるべく奮闘する。56年に「菊水酒造株式会社」を設立。生産基盤をしっかりさせようと、60年には木造の蔵を鉄筋コンクリート製に建て替えた。主流だった木製のおけから、ほうろうのタンクに切り替え、生産規模の拡大にも挑んだ。

4代目に髙澤英介氏が就任し、多様化した昭和30年代の菊水酒造のラインアップ

 蔵の近代化に燃えた英介氏だが、予想だにしなかった困難に見舞われる。加治川支流の坂井川が氾濫した66、67年の2...

残り1218文字(全文:1518文字)