処理水放出を巡る東電のトラブルが相次いだことを受け、今後の漁業への影響を懸念する志賀金三郎さん=2月下旬、福島県いわき市の小名浜港
処理水放出を巡る東電のトラブルが相次いだことを受け、今後の漁業への影響を懸念する志賀金三郎さん=2月下旬、福島県いわき市の小名浜港

 東京電力福島第1原発事故2011年3月11日に発生した東日本大震災の地震と津波で、東電福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の6基のうち1~5号機で全交流電源が喪失し、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。1、3、4号機は水素爆発し、大量の放射性物質が放出された。から13年となり、今も原発で発生している処理水東京電力福島第1原発1~3号機の溶融核燃料(デブリ)を冷やす注水などが原因で発生した汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化した水。トリチウムは除去できず、他の放射性物質もわずかに残る。敷地内のタンクでの保管量は約134万トンと容量の98%に達し、2023年8月24日に海への放出を始めた。東電の計画では2051年まで続ける。の海洋放出が始まり、半年が過ぎた。漁業への風評被害が懸念されたが、消費者からの「応援消費」もあって値崩れは見受けられない。しかし福島県いわき市の港町・小名浜(おなはま)の漁業関係者は、放射性物質を含んだ汚染水が漏れ出すトラブルなどを受け、政府や東電に対する不信感を深めている。新潟県では東電が柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。の再稼働を目指す中、同じく東電の原発が立地する福島の漁師らの声に耳を澄ませた。(長岡支社・永井竜生)

 福島県の...

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