政府や東京電力は需給の逼迫解消や低廉な電気の提供、脱炭素の実現に向け、新潟県に立地する柏崎刈羽原発の再稼働が必要だと訴える。長期企画「誰のための原発か 新潟から問う」の今シリーズでは、国や事業者が「常識」とばかりに並べる再稼働の理由を検証する。(7回続きの6)=敬称略=

 新潟市中央区の住宅街に建つモデルハウス。リビングの壁にかかるモニターには「蓄電100%」と表示があった。屋根に置かれた太陽光パネルで発電し、家庭用蓄電池でため、必要な電力を賄う。

 中央区の住宅建築業オフィスHanako(ハナコ)が手がけるのは、外部からの電気やガスを使わず、二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする住宅「ZEH(ゼッチ)エネルギー収支をゼロ以下とする家。ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(net Zero Energy House)の略語。「ゼッチ」と呼ばれる。家庭で消費するエネルギーよりも多くのエネルギーを太陽光発電などによって住宅でつくりだすことで、1年間の消費エネルギーを実質的にゼロ以下とする。使用するエネルギーを減らすため、断熱性などを高めることが必要となる。」だ。光熱費が安くなるなどとして関心を持つ客が増え、施工実績を伸ばしている。

太陽光発電などの活用でエネルギー消費を実質ゼロにする住宅「ZEH(ゼッチ)」のモデルハウス=新潟市中央区

 「社会全体でみれば、住宅のCO2排出量は無視できない多さだ。脱炭素気候変動による被害を抑えるため、二酸化炭素やメタン、フロンなど地球温暖化の原因とされる物質について、大気への排出量を実質ゼロとすること。石油や石炭、ガスなどを燃やして排出される二酸化炭素などは温室効果ガスと呼ばれる。温室効果ガスが地球を覆うことで太陽の熱を閉じ込め、気温が上昇するといわれている。化に向け、業界も対応していく必要がある」。営業主任の田中李奈(25)はそう話す。

 2050年の脱炭素社会の実現を目指す国は2023年、...

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