イトグチのPRイベントで緑繭の成分を含んだミストを浴びる来場者=2022年8月、東京
イトグチのPRイベントで緑繭の成分を含んだミストを浴びる来場者=2022年8月、東京

 新たな市場の開拓や、新規顧客の獲得を目指して行われる商品やサービスのリブランディング。人口減少やデジタル化の進展などビジネスを取り巻く環境が急激に変化する中、商品や企業そのものの存在意義を見直す動きが広がっている。ブランドの再構築で次の一手に打って出る新潟県内企業の取り組みと、戦略を紹介する。(8回続きの1)

 東京・代官山の商業施設に服を着たまま入れる“銭湯”が2022年8月、お目見えした。シャワーから出てくるのは、繭の一種で保湿力が高い「みどりまゆ(緑繭)」の成分を含んだミスト。訪れた人は服の上からミストを浴びて緑繭の効果を体験した。

 ユニークなイベントを開いたのは、十日町市の着物総合加工「きものブレイン」だ。自社で生産した緑繭を使って化粧品や石けんなどを製造している。新たに設けたスキンケアアイテムのブランド「Itoguchi(イトグチ)」のデビューと第1弾商品「みどりまゆBODY&HAIRモイストシャンプー」(400ミリリットル、3960円)をPRするために企画した。

 感染禍にもかかわらず、4日間で想定を超える1500組以上が来場した。メディアにも取り上げられ、宣伝効果は大きかった。岡元豪平取締役(46)は「来場者に商品を疑似体験してもらい、メディアも興味を持つように計画した」と狙いを説明する。

イトグチの全身シャンプー。ロゴやボトルの形など細部まで気を配りブランドの世界観を表した

 イトグチは、きものブレインが18年から販売している緑繭製品をリブランディングして生まれた。

 緑繭は、保湿成分セリシンを白い繭よりも豊富に含み、紫外線をカットする力が強い。機能性に注目した岡元取締役の父で創業者の岡元松男社長(75)が自社の無菌工場で生産を始め、化粧品などのブランド「絹生活研究所」を立ち上げた。

 オーガニックな商品群は一定の支持を集めたが、商品への自信とは裏腹に思い描いたほどは売れなかった。社内でも「パッケージデザインが製品内容と合わない」「ターゲット層が定まっていない」といった課題が指摘されていた。

 銀行のアドバイスもあり、21年秋ごろから東京の企画会社とリブランディングに取り組んだ。ターゲットを...

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