
政府は東京電力福島第1原発事故の発生以降に掲げていた「原発依存の低減」を改め、原発を最大限活用する方針に転換しました。12月からは新潟県の柏崎市と刈羽村に立地する東電柏崎刈羽原発の再稼働に向け、資源エネルギー庁が新潟県内28市町村を回って説明会を開く異例の対応を行っています。
こうした動きや再稼働問題を新潟県民はどう受け止めているのでしょうか。新潟日報社では、全会場の様子を取材し、質疑応答で語られた率直な声を順次紹介していきます。
【長岡会場の主な質疑】
参加者 60人
回答者 資源エネルギー庁原子力立地政策室長

Q(男性) この説明会をもって説明が終わったとするのか。どうして柏崎市や刈羽村の説明会はないのか。柏崎刈羽原発の再稼働の是非について、県民投票条例の制定を求めて署名活動が進められているが、その動きや現在の署名数について把握しているか。
A 説明会は、新潟県内の皆さんに理解を頂くことが目的。今後もさまざまな機会を捉えて説明をしていく。これまでの経緯を振り返ると、柏崎市や刈羽村の議会では一定の判断を頂いている。こうした流れを踏まえ、30キロ圏内の皆さんを中心としながら、幅広いご理解を得るために、今回の会場設定となっている。署名運動については承知している。
Q(男性) 原発が再稼働すれば、皆が心配しながら生きることになる。一生帰ってこられなくなる。安心して人生を過ごせるようにしてほしい。
A 福島では現在も、避難指示になっている立ち入り禁止の区域があるのは事実だ。事故を二度と起こしてはならない。皆さんの生命、身体、財産を守ることは国としての大切な責務。再生可能エネルギーを進めていくのと同様に、原子力についても安全を最優先にする考えだ。
Q(女性) 原子力専門の技術者をどのように養成しているのか。柏崎刈羽原発では、パソコンや洗濯機から発火したことがあったが、そんなことは家庭であり得ない。
A 技術者が重要という視点は大事な指摘だ。東京電力については、社員によるIDカードの不正利用も含め、いろんな事案があった。皆さんに不安感があるのも事実だと思う。東電の信頼に関する問題についても検討を進めていきたい。
Q(男性)使用済み核燃料を運んでいる時の船が座礁するなどしたら、どう対応するのか。
A 座礁してしまった場合には、使用済み燃料が入った容器が海中に沈んでいくことになるかもしれない。だが、放射線が出ないような丈夫な容器になっている。原子力規制委員会でも確認が取られている。
Q(女性) AI産業に莫大(ばくだい)な電気が必要で原発を動かす必要があるということだが、福島の事故以降、消費電力量や人口は減っている。発電容量が足りなくなるとは、今のところ考えられないのではないか。
A 電力広域的運営推進機関の見通しでは、半導体工場の新増設などが急増し、2020年代後半にかけて電力需要が増加傾向に転じる。
Q(男性) 地震列島の日本で原発を造ることは不可能だったと思う。なぜ原発に頼らないといけないのか。
A 地震については、原子力規制委員会が審査を行い、起こりうる地震の最大値などの調査を行っている。あくまでそうした審査を通った上での活用になる。
Q(女性) 私たちは何の理由で、命も、生活も、全てを犠牲にしなければならないのか。
A 安全が何を差し置いても最優先だ。頂いた不安に向き合って、避難の部分の充実を進めていくことが重要だと考えている。
Q(男性) 原発事故が絶対起こらないということでないと困る。半導体製造などで電力が必要というのはそうなのだろうが、事故があった時、私たちは社会経済のために、財産や命を失っても構わないということか。
A 企業のために申し上げているのではなく、日本全体の電力需要の話。事故は絶対あってはならない。ただ「絶対(ない)」と考えてしまうと、安全への歩みが止まってしまう。原子力による損害については、事業者が被害に遭われた方に対して賠償責任を果たすことができるように国として制度を整備している。
Q(男性) もし県民の過半数が(原発再稼働に)反対であっても、再稼働するべきだと思うか。
A 私どもとしては、できるだけ多くの皆さんにご理解をもらえるように、説明と情報発信などに取り組んでいく。
Q(男性) 「事故は絶対起きません」と言ってもらえれば、それでいい。言えないなら、廃炉にするしか方法はないのではないか。
A (電力を)当たり前のように使っている首都圏の人たちも、こうした指摘があるということを理解をしていくことが、非常に大事だ。
Q(男性) 私は、豪雪時の避難の方法はないと思っている。安全な避難方法があったら教えてほしい。
A 豪雪時に無理に避難をするのは、状況によってはかえって危険が伴う。その場合は屋内に退避をすることが重要だ。天候が回復したり、除雪作業も進められたりして、その上で避難が必要であれば、実施してもらうという考え方だ。
Q(女性) 学者によると、原子力は核分裂反応のところだけが脱炭素で、ウランを製造するところなど、ほとんど化石燃料だと聞いた。どうして原子力が脱炭素に位置づけられているのか。原発から出る温排水は、温暖化の原因になっているとも言われている。
A 国際会議などで、ウランの製造過程で二酸化炭素が問題の一つになっているということはないと思う。温排水の温暖化への影響は、学会などで議論が進む中でも、問題視されていない。太陽から降り注ぐ熱量に比べれば、無視できるほど小さいということだ。
Q(男性) この春、国は柏崎市や刈羽村、新潟県に再稼働への理解を求めたと思うが、原発から30キロ圏内の自治体にも、理解を得る必要があるのではないか。また、複合災害時に、半日とか1日とかで道路復旧ができ、半径5〜30キロ圏の避難準備区域(UPZ)外に避難できるという実効性は確保されているのか。...