東京電力が再稼働東京電力福島第1原発事故を受け、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。を目指す柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。で2024年度、作業中の人身事故が相次いでいる。東電の発表によると12月30日時点で12件で、23年度の倍だ。基本ルールが徹底されずに生じたけがや、足を滑らせたことによる転倒など多岐にわたる。東電は発生のケースがさまざまで「要因を断定するのは難しい」とするが、専門家は根深い問題がある可能性を指摘し、警鐘を鳴らしている。(柏崎総局・中内風花)

 2024年度の人身事故件数は、7月時点で2023年度1年間に並ぶ6件に上り、その後も増加は続いた。

 「昨年度を既に大きく超過している。異常な状態だ」。10月30日に行われた安全決起大会で、柏崎刈羽原発の稲垣武之所長は約200人の東電社員、協力企業社員に対し、強い言葉で危機感をあらわにし、再発防止の徹底を呼びかけた。

 所長の訴えは実らず、11月には足場として想定されていないカバーの上で協力企業作業員が足を滑らせて左足を骨折。12月にはクレーンのフックが左腕に当たった協力企業作業員が粉砕骨折した。

 柏崎刈羽原発では再稼働を目指す6、7号機で、安全対策工事やテロなどに備える「特定重大事故等対処施設」の工事など、大規模な作業を行っている。

 稲垣所長は「工事量と災害については、定量的な関係性があるというところには(分析が)至っていない」と説明。「けがの状況がそれぞれ違うため、共通的な対策はなかなかない」と、再発防止策を...

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