
経済産業省資源エネルギー庁トップらが参考人招致された3月14日の新潟県議会連合委員会では、東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。の再稼働東京電力福島第1原発事故を受け、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。に向けた政府側の説明が従来の枠にとどまり、議論は消化不良に終わった。村瀬佳史エネ庁長官が自ら求めた説明の場だったが、疑問や懸念を解消したとは言えず、党会派問わず批判の声が上がった。
質疑で多くの質問が出たのが、柏崎刈羽原発で工事が進められているテロ対策施設「特定重大事故等対処施設故意に航空機を衝突させるテロ行為があった場合でも遠隔操作で原子炉を冷却できる設備などを備える。原発本体の工事計画が認可されてから5年間の設置猶予期間が設けられている。柏崎刈羽原発7号機の設置期限は2025年10月13日。」(特重施設)についてだ。東電は2月下旬、7号機の完成時期を2025年3月から2029年8月に4年以上遅らせると発表。7号機は設置期限の2025年10月を過ぎると再稼働できない。
一方で、隣接する6号機は設置期限が29年9月と7号機と状況が異なるため、特重施設が完成せずとも再稼働は可能だ。
このルールについて各党会派から「分かりにくい」との声が共通して出た。リベラル新潟の重川隆広代表は「完成の遅れは県民の命を守る観点から納得いかない。再稼働への理解を求め続けるのか」と問うた。

村瀬氏は原子力規制委員会による「設置の有無が直ちに安全性に影響を与えるものではない」との見解を引用し、改めて再稼働を目指す姿勢を示した。しかし、重川氏は「必要だから造っているのではないか。『直ちに(影響がない)』とか小手先の説明は要らない」と憤りをあらわにした。
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再稼働した場合の新潟県への経済的メリットも焦点の一つだった。自民党県連は2024年夏、事故リスクを抱える県民に配慮した経済的恩恵を要望した。
村瀬氏は「再生可能エネルギーや水素など新潟県のポテンシャルがある分野で支援に取り組んでいく。立地地域への投資促進策も検討する」と言及したが、具体策は示さなかった。
質問に立った自民県連の高橋直揮政調会長は「(電力の供給地と消費地が同じ)他県と新潟県の状況は違う」と繰り返し強調。安全の確保が大前提としつつ「メリットがなければ県民も納得できない」と訴えた。
一方、柏崎市・刈羽選挙区選出で国政野党系会派、未来にいがたの笠原晴彦氏は「(政府は)経済重視で住民の命や生活は考えていないように感じる」と追及。事故時の避難対策が不十分などと指摘し、再考するよう迫った。
村瀬氏は「理解をいただくにはさらに努力が必要というのは指摘の通りだ」と説明せざるを得なかった。
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連合委の終了後、県議からは厳しい声が噴出し、改めて政府側の説明を求める声も多く上がった。
質疑に立った公明党県本部の市村浩二代表は「県民に分かりやすい答弁を期待していたが、いまひとつだ。かみ合っていなかった」と総括した。
自民の柄沢正三元幹事長は「答弁は人ごとで血が通っていなかった」と批判。一方で「こちらは議論の扉は閉めていない」とも語り、再度の説明を求めた。

終了後、...