
新潟県の地域医療の根幹を長年担ってきた県立病院とJA県厚生連病院の経営が危機的状況となっている。なぜここまで追い込まれたのか。再生の道はあるのか。歴史をひもときながら探る。(7回続きの5)
糸魚川市のJA県厚生連糸魚川総合病院の膵臓(すいぞう)・胆道センターは市内外から患者が集まる。膵臓がん、胆道がんは早期発見が難しい。膵臓がんなどの手術で実績がある富山大付属病院(富山市)から医師を派遣してもらい、治療に当たる。
「この領域は診断も治療も難しく、地域格差が大きい」。富山から週1回、非常勤で通う富山大付属病院消化器内科診療科長の安田一朗医師は説明する。診断レベルは上がっており、患者数は増えているという。
高度な医療を提供する一方で、糸魚川総合は「地域のかかりつけ医」としての顔も持つ。山岸文範院長は、糸魚川市内の開業医の数が多くないとし、「市民は直接ここにかかるしかない状況」と明かす。
全部で21診療科があり、医師不足の中で、手当が割高な非常勤医師らも雇い、診療科の維持に努める。ただ、患者が1日当たり数人で採算の取れない診療科もある。
糸魚川総合の2023年度決算は、純損益が2億2300万円の赤字。本業のもうけを示す事業損益の赤字は12年度から続く。22年から「3%プラン」と題し、職員の意見を募り、電気代の節約やまとめ調剤などの経費圧縮に力を入れる。

それでも、山岸院長は「へき地で人口規模が小さいところだと、赤字にならざるを得ない。構造的に収益が上がる状況ではなくなっている」と吐露する。
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県内で11病院を運営するJA県厚生連(新潟市中央区)。へき地医療を支えてきたが、23年度決算は、純損益が過去最大の35億9700万円の赤字だった。病院別にみても純損益が黒字なのは...