
アルコール依存症を克服するための米国発祥の自助グループ「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」が3月、日本法人創設50周年を迎えた。依存症に苦しむ人々が体験談を共有し、独自の回復プログラムを実践することで社会復帰を目指してきた。関係者は「依存症は誰でもかかりうる身近な病気だ」と語る。柏崎で活動するAAの会合に参加し、依存症になる背景や回復への方策を考えた。(2回続きの2)
アルコール依存症の克服を目指す柏崎市の自助グループ「AAさざなみグループ」に参加する40代女性は、4月で酒を断って2年となった。「酒に対して無力だと、AAにつながるまで分からなかった」と語る。
女性は人との関係づくりが苦手で「酒が唯一のコミュニケーション手段」だった。大酒飲みだった祖父への嫌がらせから、14歳で飲酒を始め、「飲みながら給料がもらえる」と18歳から10年ほど、水商売の世界で働いた。
昼間の仕事に転職してからも、仕事中に飲酒するようになり、仕事で知り合った男性と不倫。関係が露見し、当時の夫と離婚した。新たな家族を得ても、酒は手放せなかった。精神的に不安定な中、通院する関病院(柏崎市元城町)にAAさざなみを紹介された。
AAが定める回復プログラム「12ステップ」には、自分の生き方を振り返り、行動の誤りを書き出す「棚卸し」という作業がある。女性は「恨んでいた相手を実は傷つけていたこと、自分は悪くないと思っていたことが、苦しみの根本であると気付けた」と明かす。
今も時々、精神的に落ち込み、飲酒欲求が出る。そんな時に頼りになるのがAAメンバーだ。女性は「自分と似た経験をしていて、なぜ酒に逃げるのか気付かせてくれる」と話す。
▽自助グループが地域にあることが大事
依存症からの回復には、人のつながりが欠かせない、と医療関係者も訴える。AAさざなみ設立当時、関病院の精神保健福祉士だった岡村幸代さん(50)は「依存症の克服は1人では難しい。かつてどんな飲み方をして、今どう生きているのかを共有し、自分と向き合うこと、仲間の力を借りることが大切だ」と語る。
関病院では、柏崎市にアルコール依存症治療の専門医療機関がなかったことを背景に、2017年ごろから依存症治療の専門医療機関などを視察し、治療に力を入れてきた。
従来のような入院治療中心の考え方ではなく、...