人口減少などで地域経済が縮小しつつある中、国内外から投資を呼び込み、地域経済を活性化できるかが課題となっている。注目されているのがファンの力だ。経営者や商品・サービスに魅力を感じ、「推し活」のような形で応援する動きが増えている。重点企画「シン誘致時代」最終シリーズは、熱意と新たな手法でファンの心をつかみ、新潟県内に資金を磁石のように引き寄せる戦略や取り組みを追う。(6回続きの5)

 「このイチゴはおいしい。海外で展開したら地方創生につながるね」

 2021年の年末、ソニー元会長の出井伸之氏(故人)は、東京のオフィスで新発田市のスタートアップが工場で作ったイチゴに舌鼓を打っていた。

 人工知能(AI)を活用したイチゴ栽培の植物工場を開発している新発田市の「MD-Farm」の松田祐樹代表取締役CEO(51)は開発資金調達のため投資家を回っていた。出井氏もその一人で、イチゴを3パックほど持ち込み、事業計画を説明した。

柏崎市で講演した出井伸之氏=2008年

 高齢化、人手不足、地球温暖化などで存続へ効率化が求められている農業に参入する企業が相次いでいる。しかし、IT系に比べて、農業は事業が軌道に乗るまでに年数がかかることが多い。投資家にとっては資金回収までの道のりが長いことを意味する。課題を克服し、資金を呼び込むためには、きらりと光る特徴や個性が欠かせない。

◆農業は投資回収に時間、一方で海外展開や技術に可能性も

 完全無農薬で、通年で連続収穫できる栽培システムを目指した松田氏。2018年に開発を始めた当時は確たる展望も、資本もなかった。「確実な見通しがあれば金融機関の融資を受けられる。ないからこそ外部から資本を入れないといけなかった」と振り返る。

 MD-Farmが活用したのが...

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