男性の育児参画が求められる昨今、「いいパパ」とはどんな存在なのでしょうか?3児のパパでありassh育児コラム「子に溺れる」を執筆する横田孝優さんの進行の下、昨年8月に双子のパパになった新潟お笑い集団NAMARAの高橋なんぐさん、子育て支援団体「村上ohanaネット」を立ち上げ、さまざまな活動を行う渡辺ひろみさんに語ってもらいました。

ザツダン株式会社 代表取締役 横田孝優
よこたたかまさ 1982年生まれ。兵庫県出身。広告制作会社、専門学校の広報担当を経て2013年に独立。2021年にザツダン株式会社設立。長男(9歳)+双子男女(7歳)の3児の父。asshで子育てコラム「子に溺れる」連載中。
https://ztdn.net/

新潟お笑い集団NAMARA 高橋なんぐ
たかはしなんぐ 1981年生まれ。長岡市出身。「吉本興業主催全国お笑いコンテストin東京ドーム」優勝。お笑い芸人の活動の他、ラジオ番組「高橋なんぐの金曜天国」(BSNラジオ)、独自の講演活動「お笑い授業」を展開。2022年生まれの双子の子育てに奮闘中。
https://www.namara.info

NPO法人 村上ohanaネット 理事長 渡辺ひろみ
わたなべひろみ 1973年生まれ。村上市出身。特別支援学校教員、専業主婦、英語塾講師などを経て、2013年に村上ohanaネットを設立。2020年に法人化。地域の子育てを支えるさまざまな活動を行っている。社会人と高校生の2人の娘を持つ。
https://murakami-ohana.com
安心感と共感、家族に寄り添う
横田 初めに「いいパパってなんだろう?」という話をしていきたいと思います。なんぐさんはどう考えますか?
なんぐ 正直、今日はそれを学びにきたのですが、私は「子どもたちに安心を与えられるパパでありたい」と常に思っています。「安心」と似ている言葉で「安全」があり、安全はシステム的なことで、安心は心理的なことだと思っています。私は世界一周旅行をした経験があり、旅行を経て「日本は安全だけど安心が足りない」と感じるようになりました。だから、家庭の中で自分は子どもたちに安心を与えられる存在でありたいと思っているんですよ。
横田 そのために具体的にやっていることはありますか?
なんぐ 例えばユーモアは安心を生むので、面白いパパでありたいですね。あと、ことあるごとに2人の娘に「愛してるよ」って言ってます。これが子どもたちにとって安心につながると考えているからです。妻には言わないんですが(笑)。
横田 「大好きだよ」とか「かわいいね」ではなく、「愛してるよ」というわりと重めの言葉を使っているんですね!その理由はありますか?
なんぐ 私は「お笑い授業」という講演でたくさんの小中学校を回っていて、そこで自己肯定感を持てずに悩んでいる子どもたちにもたくさん出会ってきました。本当は愛されているのに「自分なんて…」と思っている子もいます。だから、なおさら自然に「愛してるよ」という言葉が出てくるのかもしれません。言葉に出して伝えることが大事ですよね。
横田 渡辺さんはどうですか?
渡辺 「いいパパ」の定義はたくさんあると思いますが、その一つとして、ママの話も子どもの話も聞いてくれるパパなのではないでしょうか。私は子どもが小さい頃、体調を崩してしまったのですが、体がつらいことを夫に伝えていました。そのときに、ただ「うんうん」と聞いてくれたこと、私の思いに寄り添ってくれたことで気持ちが楽になり、本当にありがたいと感じました。子育て中のパパには共感しながらママの話を聞いてほしいですね。あと、なんぐさんのように、家族のことを大事に思っているパパがやっぱりいいパパだと思うんですよね。家族のことを大事にしていたら、おそらく奥さまから言われなくても自然に家事や育児もいろいろやりませんか?
なんぐ はい。子育ては全然苦じゃないですね。努力しているというよりは夢中という感じです。
渡辺 双子の育児はすごく大変だと思いますが、すごいですね!
なんぐ わが家は双子だから夫婦2人で協力しないと回らないんですよ。それがどちらかに任せきりにならないのがいいなと思っています。生まれて半年がたち、今はようやく慣れてきたところです。
横田 私も下の子が双子ですが、赤ちゃんのときはミルクを二刀流で同時に2人に飲ませていました(笑)。同時に寝てくれないと自分の時間が作れないからです。今は小学生になり、お互いが一番心強い相方になっているみたいで、初めての場所でも2人で遊んでいます。大きくなるにつれて大変さがなくなり、貯金してきたものが返ってきているような感じですね。

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ママの働きかけがパパの意識を変える
横田 渡辺さんは村上ohanaネットの活動でいろいろな子育て中の方に会って話を聞いていると思います。そこで見聞きした中で印象的な「いいパパ」はいますか?
渡辺 いろいろなパパがいますが、「すごいパパだな」と思ったのは、当たり前におうちのことを全部やっちゃうパパです。奥さまは「私がごはんを作るのは年に数回です」と話されていました。パパが仕事から帰ってくると夕飯を一人で作って、次の日のお弁当の準備もするそうです。子育てに関しても、休みの日はパパがお子さんをおんぶして釣りに出かけたり、自分の好きなこともしたり、楽しみながら子育てをしているんですよ。スーパーパパだなと思いましたね。
横田 世の中にいいパパが増えていくには、意識を変えることが必要なのかもしれませんね。私は親子みらい図鑑「パパの細道」の取材で、40日間の育休を取ったパパとお話をする機会がありました。その方は第3子が生まれたときに初めて育休を取り、ママが里帰り出産と新生児の育児をしている間に上の2人の子の面倒を見ていたそうです。ママの方から「育休を取って、上の子たちをみてもらえない?」とパパに相談し、そこでパパは初めてその選択肢に気付いて育休を取得したんです。女性からすると「自発的に考えて育休を取ってほしい」と思うかもしれません。でも現実問題として、ママが働きかけをすることで、パパの意識が変わりパワーアップさせられることが多いのかなと思いました。