男性も家事育児の当事者意識を持とう
横田 次に男性の家事や育児の当事者意識について考えていきましょう。男性が当事者意識を高めるにはどうすればいいでしょうか?
渡辺 私はママと接することが多いですが、パパに対してこうしてほしいという要望が多く、それが気になっています。今、一生懸命家事や育児をしているパパは増えていると思いますが、「そのやり方は違う!」とママがパパのやり方を非難するケースが多いんですね。続けることできっとうまくなりますし、あまりハードルを上げず、まずは感謝の言葉をかけてあげてほしいです。
横田 「ありがとう」の言葉は大切ですね。
渡辺 あとは、ママにもパパの愚痴や話を聞いてほしいなと思います。自分だけが大変な思いをしていると考えず、お互いにいたわり合うスタンスが大切なのではないでしょうか。
横田 なんぐさんは家事や育児を積極的にしていると話されていましたが、お子さんが生まれる前から家事は積極的にやっていましたか?
なんぐ 妻が妊娠する前はあまり家事をしていなかったです。でも妊娠中に妻がつわりでつらそうにしているのを見て、自分ができる家事は全部やるようになりました。それでスイッチが入って今も続けています。
横田 赤ちゃんが生まれてから家事をやり始めるパパが多いと思いますが、育児に突入する前の準備期間に始めるのはすごくいいことですよね。
渡辺 私も大賛成ですね。パパスイッチを入れていく時期はどんどん早めた方がいいと思います。これから父親になる「プレパパ」の時期から育児について考えることが大事といわれていますが、私は中高生くらいの時期から育児について教育することがいいと思っています。例えば家庭科の授業で教わることは、そのときだけでなく将来、男性も当たり前にやることだと思いますが、それが子どもたちにしっかり伝わっていないように感じています。内容に子育てに関することなども取り入れ、もっと子供たちがピンとくる名称にすれば、当事者意識を早めに持てるようになるのではないでしょうか。
横田 なんぐさんは家事育児をやってみてどのように感じていますか?
なんぐ 良かったと思うのは、両親に感謝の気持ちを持てるようになったことです。今後も子育てをしていく中で、「こんなときに両親はこうしてくれたな」と思い出すんだろうなと。
渡辺 お父さんお母さんもそれを聞いたらうれしいでしょうね。
横田 そういうことは、きちんと伝えていますか?
なんぐ いえ。この記事を通して伝えられたらと思っています(笑)。

村上ohanaネットはパパの仲間づくりの場「パパサークル」があり、年に数回イベントなどを行っている
男性の育休取得のハードルを下げよう
横田 男性の育休取得も子育ての大切なテーマです。渡辺さんは男性が育休を取りやすくするためにはどうするといいと思いますか?
渡辺 子育てを理解し、支援する上司である「イクボス」の育成が大事だと考えています。いざ育休を取ろうとすると職場に負担がかかる事態になりやすいですよね。管理職や役員には、そうならない体制づくりをして子育てを後押ししてほしいですね。そうしなければ、男性の育休はいつまでも取りづらいままです。男性が育休を取って家事や育児に関わることで、ママが子育てでどういう経験をしているかを実感できます。ママに共感する力が高まりますし、それはその後の子育てにもつながっていくはずです。
なんぐ 育休を取る人は謝らない方がいいですよね。肩身の狭い思いをする人が多いですが、胸を張って取れるといいなと思います。
渡辺 私もそう思います。育休取得に難色を示すボスがいたら一斉に白い目で見られるくらい当たり前の雰囲気がなければダメかなと。
横田 男性の育休取得に力を入れている企業を取材したときに、育休取得経験者が増えるにつれて男性社員の間で互いの子どもの話をよくするようになったと聞きました。その結果、入学式や参観日にみんなが休みを取りやすくなったそうです。子育てをしているとき、今自分がどういう時期なのかを周りが知っているのも大事ですよね。私は以前フリーランスだったので、子どもが小さいときは育児の合間に仕事をするような感じでしたし、保育園に行き始めてからも、一緒に仕事をしている方の理解や協力をいただけたことで、子どもが熱を出したときにはすぐに迎えに行くことができました。男性の育休取得を促すためには、例えば「育休を取ったパパが何をして過ごしたか?」というのがメディアを通じて伝わっていくといいなと思います。それから、本人ももちろんそうだし、上司もかっこいいと言われるといいですよね。あと、これも取材で聞いたことですが、思い通りにならない子育てをすることで時間を効率的に使えるようになるなど、仕事のスキルも向上するそうです。その観点でも、上司は積極的に部下に育休を取らせた方がいいと話されていました。