山家漬を折り箱に詰める従業員=南魚沼市六日町

 県土が広い新潟県は、一口に漬物といっても地域によってさまざまな食材や味付け、熟成方法があります。伝統を生かしつつ新しさを追求した商品を求め、遠方からやって来る人もいます。今週のにいがた業界地図は、人気のご当地漬物を紹介します。

食材を八海山の酒かすに…「三度漬け」でうま味閉じ込め

南魚沼市「今成漬物店」

 シャキシャキとした歯応えが心地よい。野菜のうま味を吸った酒かすの独特の風味が、口の中に広がる。

 南魚沼市六日町の今成漬物店の「山家漬(やまがづけ)」は、魚沼地域で古くから親しまれてきた錦糸瓜(きんしうり)や越瓜(こしうり)のほか、キュウリ、巾着ナス、ワラビといった地元で取れた食材を「八海山」(南魚沼市長森)の大吟醸の酒かすに漬け込み、丁寧に手作りしている。

 山家漬は「三度漬け」で作る。最初は塩だけの「生(き)漬」。その後、酒かすと砂糖に漬け込み、塩を抜いていく「中漬」。最後は「本漬」で、中漬の酒かすを落とし、新たな酒かすと砂糖に漬け、酒かすのうま味を野菜の中に閉じ込めていく。

5種類の山家漬。中央が錦糸瓜で、右上から時計回りに巾着ナス、越瓜、ワラビ、キュウリ

 全ての工程を味や熟成の具合を見ながら、数カ月から1年ほどかけて食べ頃を見極めていく。

 山家漬と命名したのは、新潟市出身の書家で歌人の会津八一だ。創業者の今成隼一郎(じゅんいちろう)が、旧制新潟中学時代の同級生だった八一に命名を依頼。味を気に入った八一は、平安時代の歌人西行法師の歌集「山家集」から取った。包装紙には、八一が揮毫(きごう)した「山家漬」の文字が存在感を示している。

 今成正子代表の長女要子(ようこ)さん(54)は「この地域で取れる食材を使って、昔からの製法で味を落とさずに作ることを第一に心がけてきた。これからも無理せずに、食文化として残していきたい」と語った。

■今成漬物店 南魚沼市六日町1848。山家漬は錦糸瓜や越瓜、キュウリなど5種類の漬物が入って270グラム1080円から。午前10時〜午後6時。不定休。新潟伊勢丹やCoCoLo長岡店内の横山商店などでも取り扱っている。025(772)2015。

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