政府は東京電力福島第1原発事故の発生以降に掲げていた「原発依存の低減」を改め、原発を最大限活用する方針に転換しました。12月からは新潟県の柏崎市と刈羽村に立地する東電柏崎刈羽原発の再稼働に向け、資源エネルギー庁が新潟県内28市町村を回って説明会を開く異例の対応を行っています。

 こうした動きや再稼働問題を新潟県民はどう受け止めているのでしょうか。新潟日報社では、全会場の様子を取材し、質疑応答で語られた率直な声を順次紹介していきます。

【津南会場の主な質疑】

参加者 31人
回答者 資源エネルギー庁原子力立地政策室企画官

経済産業省資源エネルギー庁の担当者が原子力政策などについて住民と質疑した説明会=2月5日、津南町公民館

Q (男性)大雪で国土交通省が不要不急の外出をしないよう呼び掛ける中でも(エネ庁は)説明会を開いた。来られなかった住民も多いのではないか。

A 東京を出発し、湯沢から車を運転してきて、この地の大変さの一端を感じた。次回以降どういうコンディションで開催するかは、もらった意見を参考にしながら改善したい。

Q (男性)この説明会の目的は何か。

A エネルギー情勢、エネルギー政策に対する理解を少しでも深めるきっかけにしてもらい、意見交換する場として開いている。東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。も含め、原発再稼働東京電力福島第1原発事故を踏まえ、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。を政府の方針として掲げているので、原子力の必要性も説明させてもらった。

Q (男性)原発は、事故が起きたら周辺住民が元の生活に戻れない怖さがある。福島事故2011年3月11日に発生した東日本大震災の地震と津波で、東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の6基のうち1~5号機で全交流電源が喪失し、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。1、3、4号機は水素爆発し、大量の放射性物質が放出された。と同程度の事故に耐えられればいいのではない。想定しない事故が起きたら住民の生活を補償できるのか。

A 原子力損害賠償法があり、一義的には事業者が責任を負って賠償する制度になっている。適切な補償がされるように、国も責任を持って対応する。

Q (女性)再生可能エネルギーや蓄電池をしっかり開発するべきだ。

A 指摘の通り、再エネをしっかり増やして主力電源化する。蓄電池の低コスト化、大容量化や次世代の「ペロブスカイト太陽電池鉱物の一種「灰(かい)チタン石」が持つ独特の結晶構造(ペロブスカイト構造)を持つ物質を材料とする太陽電池。電気を発生する材料の厚みは毛髪の太さの100分の1といわれる。発電する膜は印刷技術を使ってフィルムやガラスに塗り、乾かして製造する。現在主流のシリコン太陽電池に比べて、低コストで製造できる。曇りや雨の日、室内照明など弱い光でも発電が可能で、太陽光を電気エネルギーに変える変換効率は研究室ベースで20%を超える。軽くて柔軟で、壁や窓、曲面、車にも取り付けることができ、設置場所の選択肢が大幅に広がる。」の技術開発、実用化などに相当の予算を計上している。

Q (女性)再エネを進めるなら、後始末できるかも分からない原発にしがみつかないでもらいたい。

A 原子力についてさまざまな意見があることは認識、理解している。現時点で言えば、電力の安定供給や脱炭素などの観点から再エネだけで賄うのは難しく、...

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